1. はじめに
Q上の楕円曲線の等分点の作る体や関連して虚数乗法の話が面白そうにみえたので、Silverman・Tateの”Rational Points on Elliptic Curves”(以下[Sil]とする)の第6章を読み始める。その後、Hasse-Weil ゼータ関数でも具体的に計算してみようかなという、大雑把な構想を描く。
第6章を読み始めたのはよいが、具体的な計算がどうもうまくいかない。P191にあった楕円曲線
の3等分点の作る体のところでつまずいてしまった。2日かけてようやく解決したので、備忘録としてメモに残しておくことにした。これでは先が思いやられる。
2. 問題
Cの3等分点(C[3]と記す)は8点あり、原点を加えると、群としてC[3]≅Z/3Z⊕Z/3Z となる。
具体的には、
ここで、
このとき、Q にC[3]の座標を加えてできる体はQ(β,i)に等しい。
というのが問題である。
3. 解決の流れ
であるので
したがって、 の満たす 上での の既約方程式は
であり、この方程式の根は、 である。
この方程式は 上の多項式としても既約である。
また、
は、 の満たす 上の既約方程式である。
とすると
同様に
よって、 が満たすこの方程式の他の根は、 である。
に の座標を加えてできる体が に等しいことを示すには を言えばよい。
よって、
偏角を考えて したがって、 である。 についても同様。
下図に関係する体の関係を示す。直近の体間の拡大次数はすべて2である。