1.はじめに
Silverman Tate のRational Points on Elliptic Curves(以下,[Sil]と記す)の第4章は有限体上の楕円曲線を扱っている。章末の練習問題に取り組み始めたので、備忘録としてメモしておく。解答が不完全であったり、誤りがあったりする可能性はありますことご注意ください。誤りにお気づきの節はご連絡いただければ幸いです。
※7月17日に4.2【問題】の解答の流れを追加した。
2.問題
4.1【問題】
を素数、 、 を円錐曲線
とする。このとき、(a),(b)を示せ。
ならば
ならば または
また、これらの例をあげよ。
【解答の流れ】
を変形して
したがって、最初から としてよい。
次の①、②の順に説明する。
① この円錐曲線上に有理点 が存在するとして を示す。
② この円錐曲線上に有理点 が存在することを示す。
① 円錐曲線上に有理点 が存在するとして を示す。
のとき:
同次座標での解を求めるので とする。
以外の解は、円錐曲線と を通る直線との交点 として得られる。
直線の方程式 を円錐曲線の式に代入すると
がこの方程式の解なので、
このように、解 は の有理式として表される。
が 平方剰余のとき:
の解となる2つの 以外の に対応する 個の解、および の計 個の解がある。
が 平方非剰余のとき:
に対応する 個の解および の計 個の解がある。
のとき:
が 平方剰余のとき:
の解が2個ある。
が 平方非剰余のとき:
の解はない。
以上の より、①がいえた。
② この円錐曲線上に有理点 が存在することを示す。
が 平方剰余のとき:
が存在し、 よって、
とおけば
となり解があることがわかる。
が 平方非剰余のとき:
または が平方剰余であれば、 または、 とする解があることは容易にわかる。
も も平方非剰余とするとき、 が 全体を動くとき、 の値域を考える。
は0、平方剰余、平方非剰余の3種類の共通部分のない集合の和である。また、平方剰余の集合と非平方剰余の集合の元の数は等しい。
が を動くとき は、 であれば 、平方剰余の集合は平方非剰余に、非平方剰余の集合は平方剰余に写される。これに を足すと は平方非剰余に、平方非剰余(もともとの平方剰余)のうちの一つは0になるので、平方剰余(もともとの平方非剰余)のうちの一つは平方剰余になることがわかる。これは、 が解を有することを意味する。
以上で②がいえた。
ならば円錐曲線の式は
が平方非剰余ならば、解は の一つのみ。
平方剰余ならば、 のとき の解が一つある。
のとき とするとき を満たす解が2p個ある。よって、計 個の解がある。
例について
とする。
の例: の斉次座標での解は、
の が平方非剰余の例: の斉次座標での解は、 のみ
の が平方剰余の例: の斉次座標での解は、 の7個
4.2【問題】
素数 について、有限体上の楕円曲線 の有理点群 を求めよ。
【解答の流れ】
係数の多項式 について
である。
次に の値を で平方剰余かどうか考えて を求める。
・ のとき
であり、 は で平方非剰余。したがって、集合として である。 の点は1点のみなので、群として
・ のとき
であり、 は で平方非剰余。したがって、したがって、集合として である。有理点 の 座標を とすると、 である。 とすると よって、 これより、群として
・ のとき
であり、 は平方非剰余。したがって、集合として
である。また、群として、
・ のとき
であり、 は平方非剰余。 したがって、集合として
群として、
・ のとき
であり、 は平方非剰余。したがって、集合として、
である。 とすると である。また、点 の 倍の 座標は、それぞれ である。したがって、位数が の元は しかない。よって、 である。