ES 地面の目印

以前の数学メモは、地面の目印 -エスワン- にあります。

メモ41 有限体Fpの乗法群から有限体Fpへの写像の全射性に関する予想(その2)

1. はじめに

 メモ40で以下の予想を示し、p≡7 または 13 (mod \ 18) のとき以外では予想が正しいことを示した。

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【予想】

p2,3,7,13 以外の素数とするとき、以下の有限体 F_{p} の乗法群 F_{p}^{*} から Fp への写像全射である。

 

 F_{p}^{*} \times F_{p}^{*} ∋ (x,y) ↦ x^{3}+y^{3} ∊ Fp

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 p≡7 または 13 (mod \ 18) かつ p≠13 のときでも、予想が成り立つことがわかったので、メモとして記すこととする。相変わらず分かりにくい証明なので、スカッと説明できる証明があれば是非ご教示下さい。

 

2. 予想の証明

 メモ40では、以下の命題1,2をもとに予想の写像全射性を示した。

 

命題1p≡1(mod \ 3) p \ne 7 のとき 1+α^{3i} (0 \leq  i \lt (p-1)/3) の中で、α^{3j+1} 及び α^{3k+2}の形の元が存在する。ただし、α素数 p に関する原始根とする。

命題2p≡1(mod \ 18) のとき 1+α^{3i} (0 \leq i \lt (p-1)/3) の中で α^{3j}  の形の元が存在する。ただし、α素数 p に関する原始根とする。

 

 予想を証明するには、命題2が p≡1(mod \ 18) という条件がなくとも成り立つことを示せばよい。

このため、以下の命題が成り立つことを示す。

 

命題2’p≡1 (mod \ 3), \  p \ne 7,13 のとき、1+α^{3i} (0 \leq i \lt (p-1)/3) の中でα^{3j} の形の元が存在する。ただし、α素数 p に関する原始根とする。

(証明)

  F_{p}^{*} の元を 1,2,3, \cdots ,p-1 と並べる。これらを α^{i} であらわしたとき、mod \ 3 でのべき指数  i を単にべき指数と呼ぶことにする。 0 \lt i \leq (p-1)/2 に対し、ip-i のべき指数は同じである。つまり、(p-1)/2(p-1)/2+1 を境にべき指数は鏡像の関係にあることに注意する

1=α^{0}, p-1=α^{(p-1)/2} なので 1,p-1 のべき指数は 0 である。

命題を証明するには、べき指数 0 の元が隣接しないとして矛盾することをいえばよい。

1 のべき指数は 0 であるので 2 のべき指数は 12 である。今、2 のべき指数を1 であるとする。

すると 4=2^{2} のべき指数は 2 である。3 のべき指数を 0 とすると

 3^{2}=2 \cdot 4+1 であり  3^{2} 及び 2 \cdot 4 のべき指数は 0 であるので矛盾。したがって、3 のべき指数は 12 である。

 次に p \ne 7 なのでべき指数 0 の元は 4 つ以上ある。1,p-1 でないべき指数 0 の元の両側の元のべき指数は 2 である。べき指数 0 の元を b としb-1b+1 のべき指数が同一でないとすると、そのべき指数は 0 ではないので、(b-1) \cdot (b+1) のべき指数は 0 である。

 b^{2}=(b-1) \cdot (b+1)+1 なのでべき指数 0 の元が隣接することになる。

また、両側のべき指数が 1 とすると b-1=α^{3k+1}, b+1=α^{3k’+1} となる自然数k,k’ が存在する。

2=α^{3k’+1}-α^{3k+1}=α^{3k+1}(α^{3(k’-k)}-1) なので 2 のべき指数が 1 であることから、α^{3(k’-k)}-1 のべき指数は 0 となる。これは、べき指数 0 の元が隣接することになり矛盾。

 さらに、(p-1)/2=α^{l} とすると (p-1)/2+1=-α^{l} であるので、両者の差をとって 1=-2α^{l}

 これより、(p-1)/2 のべき指数は 2 であることがわかる。

 

 以上により、1 でも p-1 でもないべき指数 0 の元の両側はべき指数 2 の元であることが分かった。

そうすると、べき指数 0,1,2 の元の総数は (p-1)/3 であり、(p-1)/2(p-1)/2+1 を境にべき指数は鏡像の関係にあるので 1 から (p-1)/2 までの間で、べき指数 0,1,2 の元の総数は (p-1)/6 であり、(p-1)/2 のべき指数は2である。

 したがって、1 から (p-1)/2 までの間で 1 ではないべき指数 0 の元の両側はべき指数 2 の元であり、(p-1)/2 のべき指数は 2 であるので、(p-1)/63 より大きな場合、つまり p \ne 7,13 であれば 1 ではないべき指数 0 の元の間隔は 1 でなければならず、かつ、べき指数 2 の元はべき指数 0 の元に隣接しなければならない。つまり、可能性としては 3 のべき指数が 12 に応じて以下の 2 ケースあるのみである。

 

 数  ケース①  ケース②  [ ]はべき指数をあらわす。

 1   [0]     [0]

 2   [1]     [1]

 3   [1]     [2]

 4   [2]               

 5   [0]

 6    [2]

 7    

 8   [0]

 

ケース①

 42^{2} なので、4 のべき指数は 2 。したがって 5 のべき指数は 0 であり。すると、6 のべき指数は 2 となる。8=2^{3} なのでべき指数は 0 である。そうすると、7 のべき指数が0であれば、べき指数 0 の元が隣接する。べき指数が 0 でなければ、べき指数 0 の元の間隔が 2 となり矛盾。

 

ケース②

 3 のべき指数が 2 とすると、隣接する 4 のべき指数は 0 である。一方、4=2^{2} なのでべき指数は 2 であり、矛盾する。

 

 最初に 2 のべき指数を 1 と仮定したが 2 の場合も同様の議論が成り立つ。       (証明終)