ES 地面の目印

以前の数学メモは、地面の目印 -エスワン- にあります。

メモ43 有限体Fpにおける原始根の3の倍数乗+1の分布についての予想(その2)

1. はじめに

 メモ42で「有限体Fpにおける原始根の3の倍数乗+1の分布についての予想」について書き、数日後に、それが成り立たないことを報告した。

 当然といえば当然であるが、有限体における楕円曲線上の有理点の個数については、既に様々な研究成果があり、今回の予想はそれに派生して生じた問題であるので、既に結果が出ていることが分かった。浅学菲才に恥じ入るばかりである。

 Silverman・Tateの”Rational Points on Elliptic Curves”(以下[Sil]とする)第4章2. ガウスの定理の説明の真似をして、この問題に一つの結論を得たので、メモとして残しておくことにする。

 なお[Sil]によればガウスの定理とは以下をいう。

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定理(ガウス)

 x,y,z を有限体 F_{p} の元、M_{p}x^{3}+y^{3}+z^{3}=0射影平面での解の数とする。このとき、

  • p \not \equiv 1 \pmod 3 であれば M_{p}=p+1
  •  p \equiv  1\pmod 3 であれば 4p=A^{2}+27B^{2} となる整数が符号を除き一意で定まり、A の符号を A \equiv 1 \pmod 3 で定めれば、M_{p}=p+1+A 

----------------------------

 

2. 問題の設定と解答

 有限体 F_{p} における原始根の 3の倍数乗+1の分布について、問題を以下のように設定する。 

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問題 

 p p \equiv 1 \pmod 3素数α を有限体 F_{p} の原始根とする。このとき、

1+α^{3i} (0 \leq i \lt (p-1)/3, i \neq (p-1)/2)α のべき乗であらわした時の指数を mod \ 3 で考えるとき、指数が 0,1,2 となる元の個数を求めよ。

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 このとき、問題の解答は以下のとおり。

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解答

 4p=A^{2}+27B^{2} となる整数が符号を除き一意で定まり、A \equiv 1 \pmod 3 \ , B \gt 0 とすれば

 指数0の個数:(A+p-8)/9

 指数1と指数2の元の個数の大きい方の数:(-A+9B+2p-4)/18

 指数1と指数2の元の個数の少ない方の数:(-A-9B+2p-4)/18

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 この結果をメモ42にあげた例に適用したのが下表である。

p \hspace{15pt} A \hspace{15pt} B 指数0の個数 指数1と指数2の個数:大の方 指数1と指数2の個数:小の方

\hspace{70pt} \frac{A+p-8}{9} \hspace{40pt} \frac{-A+9B+2p-4}{18} \hspace{50pt} \frac{-A-9B+2p-4}{18}

 19 \hspace{15pt} 7 \hspace{15pt} 1  \hspace{30pt} 2 \hspace{80pt} 2  \hspace{95pt} 1

 37 \hspace{5pt} -11 \hspace{7pt} 1  \hspace{30pt} 2 \hspace{80pt} 5  \hspace{95pt} 4

 73 \hspace{15pt} 7 \hspace{15pt} 3  \hspace{30pt} 8 \hspace{80pt} 9  \hspace{95pt} 6

 109 \hspace{5pt} -2 \hspace{7pt} 4  \hspace{27pt} 11 \hspace{75pt} 14  \hspace{90pt} 10

 127 \hspace{3pt} -20 \hspace{5pt} 2  \hspace{27pt} 11 \hspace{75pt} 16  \hspace{90pt} 14

 163 \hspace{12pt} 25 \hspace{8pt} 1  \hspace{27pt} 20 \hspace{75pt} 17  \hspace{90pt} 16

 181 \hspace{15pt} 7 \hspace{10pt} 5  \hspace{27pt} 20 \hspace{75pt} 22  \hspace{90pt} 17

 199 \hspace{3pt} -11 \hspace{5pt} 5  \hspace{27pt} 20 \hspace{75pt} 25  \hspace{90pt} 20

 271 \hspace{3pt} -29 \hspace{5pt} 3  \hspace{27pt} 26 \hspace{75pt} 33  \hspace{90pt} 30

 307 \hspace{12pt} 16 \hspace{8pt} 6  \hspace{27pt} 35 \hspace{75pt} 36  \hspace{90pt} 30

 379 \hspace{3pt} -29 \hspace{5pt} 5  \hspace{27pt} 38 \hspace{75pt} 46  \hspace{90pt} 41

 397 \hspace{12pt} 34 \hspace{8pt} 4  \hspace{27pt} 47 \hspace{75pt} 44  \hspace{90pt} 40

 433 \hspace{5pt} -2 \hspace{7pt} 8  \hspace{27pt} 47 \hspace{75pt} 52  \hspace{90pt} 44

 487 \hspace{12pt} 25 \hspace{8pt} 7  \hspace{27pt} 56 \hspace{75pt} 56  \hspace{90pt} 49

 

 ちなみに、メモ42に述べた予想が成り立つとすると、指数1と指数2の元の個数の差の絶対値は 5 以下であるので、0 \lt B \leq 5 、また、指数0と指数1及び指数0と指数2の元の個数の差の絶対値も 5 以下であるので、

 

 |(A+p-8)/9 - (-A+9B+2p-4)/18|=|3A-9B-12| \leq 5

 |(A+p-8)/9 - (-A-9B+2p-4)/18|=|3A+9B-12| \leq 5

 

より、A,B の取りうる値は有限である。具体的に求めると、予想が成り立つのは、上表にある p=37,73,109,127,163,181 のみとなる。結果として、なんとも情けない予想であった。

 

3. 解答の流れ

 それでは、[Sil] の説明をまねて解答の流れを記す。

3.1 記号の準備など

 pp \equiv 1 \pmod 3素数F_{p} を位数 p の有限体、αF_{p} の原始根とする。

また、S_{0},S_{1},S_{2},T_{0},T_{1},T_{2} を以下のとおりとする。

 S_{0}= \{ α^{3i} | 0 \leq  i \lt  (p-1)/3 \}       

 S_{1}= \{ α^{3i+1} | 0 \leq  i \lt (p-1)/3 \}   

 S_{2}= \{ α^{3i+2} | 0 \leq  i \lt (p-1)/3 \}    

 T_{0}= \{ 1+α^{3i} | 0 \leq  i \lt (p-1)/3 \}      

 T_{1}= \{ 1+α^{3i+1} | 0 \leq  i \lt  (p-1)/3 \} 

 T_{2}= \{ 1+α^{3i+2} | 0 \leq  i \lt (p-1)/3 \} 

このとき、以下が成り立つ。

・ F_{p}= \{ 0 \} ⋃S_{0}⋃S_{1}⋃S_{2}   S_{i}⋂S_{j}= \varnothing \ (i \neq j)

・ 集合 S_{0},S_{1},S_{2},T_{0},T_{1},T_{2} の位数は (p-1)/3 である。

・ S_{0} は、F_{p} の乗法群 F_{p}^{*} の指数3の部分群であり、-1=α^{(p-1)/2}∊S_{0}, \ β∊S_{0} に対し βS_{i}=S_{i}

   β∊S_{1} に対し βS_{0}=S_{1}, \ βS_{1}=S_{2}, \ βS_{2}=S_{0}

   β^{2}∊S_{2}, \ β^{2}S_{0}=S_{2}, \ β^{2}S_{1}=S_{0}, \ β^{2}S_{2}=S_{1}

・  \{ 1 \} ⋃T_{0}⋃T_{1}⋃T_{2}=F_{p}, \ T_{i}⋂T_{j}= \varnothing \ (i \neq j), \ 0∊T_{0}

・  (T_{0}- \{ 0 \} )⋃T_{1}⋃T_{2}=(S_{0}- \{ 1 \} )⋃S_{1}⋃S_{2}

 問題は、T_{0}⋂S_{0} \hspace{5pt} T_{0}⋂S_{1} \hspace{5pt} T_{0}⋂S_{2}の位数を求めることである。

 これらの3つの集合の位数を l,m,n とおく。つまり、

  \# T_{0}⋂S_{0}=l, \ \# T_{0}⋂S_{1}=m, \ \# T_{0}⋂S_{2}=n とする。

そうすると

  \# (T_{0}⋂S_{0})⋃(T_{0}⋂S_{1})⋃(T_{0}⋂S_{2})= \# (T_{0}- \{ 0 \} )=l+m+n=(p-1)/3-1

 

3.2 解答の前に命題をいくつか準備

 T_{i}⋂S_{j} について以下の命題1が成り立つ。

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命題1 以下の集合間には1対1対応が存在する。したがって、集合の位数は同じ

  1.  T_{1}⋂S_{2} ≅ T_{2}⋂S_{1}
  2.  T_{1}⋂S_{0} ≅ T_{0}⋂S_{1}, \ T_{2}⋂S_{0} ≅ T_{0}⋂S_{2} 
  3.  T_{1}⋂S_{1} ≅ T_{2}⋂S_{0}, \ T_{2}⋂S_{2} ≅ T_{1}⋂S_{0}

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(証明)

a. \ 1+α^{3i+1}=α^{3j+2} ∊ T_{1}⋂S_{2} に対し

1+α^{3 \{ (p-1)/6+j \}+2 } =α^{3 \{ (p-1)/6+i \}+1 } ∊T_{2}⋂S_{1} を定めれば良い。

b. \ 1+α^{3i+1}=α^{3j} ∊ T_{1}⋂S_{0} に対し

1+α^{3 \{ (p-1)/6+j \} }=α^{3 \{ (p-1)/6+i \}+1}∊T_{0}⋂S_{1} を定めれば良い。

T_{2}⋂S_{0} ≅ T_{0}⋂S_{2} も同様

c. \ 1+α^{3i+1}=α^{3j+1} ∊ T_{1}⋂S_{1} に対し

    α^{3i+1}(1+α^{-(3i+1)}=α^{3j+1} より

    1+α^{3(-i-1)+2}=α^{3(j-i)}∊T_{2}⋂S_{0} を定めればよい。

    T_{2}⋂S_{2} ≅ T_{1}⋂S_{0} も同様

(証明終)

 

また、T_{i}⋂S_{j} 間の和集合について以下の命題2が成り立つ。

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命題2 以下が成り立つ。

a. (T_{1}⋂S_{0})⋃(T_{1}⋂S_{1})⋃(T_{1}⋂S_{2})=T_{1}     

   \# T_{1}⋂S_{0}=m, \ \# T_{1}⋂S_{1}=n, \ \# (T_{1}⋂S_{2})=l+1

b. (T_{2}⋂S_{0})⋃(T_{2}⋂S_{1})⋃(T_{2}⋂S_{2})=T_{2}    

   \# T_{2}⋂S_{0}=n, \ \# T_{2}⋂S_{1}=l+1, \ \# (T_{2}⋂S_{2})=m

--------------------------

(証明)

a. (T_{1}⋂S_{0})⋃(T_{1}⋂S_{1})⋃(T_{1}⋂S_{2})=T_{1}⋂(S_{0}⋃S_{1}⋃S_{2})=T_{1}⋂F_{p}^{*}=T_{1}

   命題1 a. より  \# T_{1}⋂S_{0}= \# T_{0}⋂S_{1}=m

   命題1 b., \ c. より  \# T_{1}⋂S_{1}= \# T_{2}⋂S_{0}= \# T_{0}⋂S_{2}=n

  したがって、m+ \# (T_{1}⋂S_{2})+n=(p-1)/3   

  \# (T_{1}⋂S_{2})=(p-1)/3-m-n

 一方、 l+m+n= \# (T_{0}⋂S_{0})+ \# (T_{0}⋂S_{1})+ \# (T_0⋂S_{2})

 \hspace{30pt} = \# (T_{0}⋂S_{0})⋃(T_{0}⋂S_{1})⋃(T_{0}⋂S_{2})

 \hspace{30pt} = \# T_{0}⋂(S_{0}⋃S_{1}⋃S_{2})= \# T_{0}⋂F_{p}^{*}=(p-1)/3-1

   したがって、 \# (T_{1}⋂S_{2})=l+1

b. \ a. と同様

(証明終)

 

 天下り式であるが、後で使うので以下を示しておく。

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命題3 

N_{x}= \# \{ (r_{1},r_{2})|r_{1}+r_{2}=x, \ r_{1}∊S_{1},r_{2}∊S_{2} \} とおくと

N_{x}xS_{0}, \ S_{1}, \ S_{2} のどれに属すかのみに依存し、

    N_{x}=l+1 \  \  (x∊S_{0} のとき) 

      =m \hspace{20pt} (x∊S_{1} のとき)

      =n  \hspace{20pt}   (x∊S_{2} のとき)

--------------------------

(証明)

r∊S_{0}, \ x=r_{1}+r_{2} \ (r_{1}∊S_{1}, \ r_{2}∊S_{2}) のとき rx=r \cdot r_{1}+r \cdot r_{2} \ (r \cdot r_{1}∊S_{1}, \ r \cdot r_{2}∊S_{2})

(r_{1}, r_{2}) のペアに対し r \cdot r_{1}, \ r \cdot r_{2}) を対応させる写像N_{x} から N_{rx} への全単射。   

集合として rS_{i}=S_{i} なので、N_{x}xS_{0}, \ S_{1}, \ S_{2} のどれに属すかのみに依存する。

x∊S_{1} とする。(r_{1},r_{2})∊N_{x} に対し x/r_{1} を与える写像 f を考える

x/r_{1}=1+r_{2}/r_{1} \ \  r_{2}/r_{1}∊S_{1} であり、べき指数を考えて x/r_{1}∊S_{0}

つまり写像 fN_{x} から T_{1}⋂S_{0} への写像である。

x/r_{1}=x/r_{1}’ とすれば r_{1}=r_{1}' なので f単射である。

b∊T_{1}⋂S_{0} とすると b=1+α^{3i+1}=α^{3j} と書ける。

このとき、r_{1}=x \cdot α^{-3j}, \ r_{2}=x \cdot α^{3(i-j)+1} とすると、r_{1}∊S_{1},r_{2}∊S_{2} かつ x/r_{1}=b である。よって、f全射である。

 したがって、

x∊S_{1} のとき N_{x}= \# (T_{1}⋂S_{0})

命題1. b より  \# (T_{1}⋂S_{0})= \# (T_{0}⋂S_{1})=m 

同様に、x∊S_{2} のとき N_{x}=n

x∊S_{0} のとき N_{x}=N_{0}, \  x∊S_{1} のとき N_{x}=N_{1}, \ x∊S_{2} のとき N_{x}=N_{2} とすると

 \{ (p-1)/3 \} ^{2}= \# \{ (r_{1},r_{2})|r_{1}∊S_{1},r_{2}∊S_{2} \}

 \hspace{40pt} = \displaystyle \sum_{x=r1+r2∊S_{0}} N_0+ \displaystyle \sum_{x=r1+r2∊S_{1}} N_1+ \displaystyle \sum_{x=r1+r2∊S_{2}} N_2

      =(p-1)/3 \cdot (N_0+N_1+N_2)

よって N_0+N_1+N_2=(p-1)/3

一方  l+m+n=(p-1)/3-1 であるので N_0=l+1

(証明終)

 

3.3 ガウス和を用いた問題の解答

 改めて問題とその解答を示す。

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問題 

 p p \equiv 1 \pmod 3素数α を有限体 F_{p} の原始根とする。このとき、

1+α^{3i} (0 \leq i \lt (p-1)/3, i \neq (p-1)/2)α のべき乗であらわした時の指数を mod \ 3 で考えるとき、指数が 0,1,2 となる元の個数を求めよ。

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 このとき、問題の解答は以下のとおり。

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解答

 4p=A^{2}+27B^{2} となる整数が符号を除き一意で定まり、A \equiv 1 \pmod 3 \ , B \gt 0 とすれば

 指数0の個数:(A+p-8)/9

 指数1と指数2の元の個数の大きい方の数:(-A+9B+2p-4)/18

 指数1と指数2の元の個数の少ない方の数:(-A-9B+2p-4)/18

-------------------------

(解答)

 ガウス和を用いて l,m,n を求める。

ζ1p 乗根 ζ=e^{2πi/p} とし

 \hspace{30pt} α_0=\displaystyle \sum_{r∊S_0} ζ^{r}

 \hspace{30pt} α_1= \displaystyle \sum_{r∊S_1} ζ^{r}

 \hspace{30pt} α_2= \displaystyle \sum_{r∊S_2} ζ^{r}

とおき、

 \hspace{30pt} α_0+α_1+α_2, \ α_0α_1+α_1α_2+α_2α_1, α_0α_1α_2 を求める。

 \hspace{30pt} α_0+α_1+α_2=\displaystyle \sum_{r∊F_p^{*}} ζ^{r} =-1

である。

 次に  α_0α_1+α_1α_2+α_2α_1, α_0α_1α_2 を求める。

 \hspace{30pt} α_1α_2= \displaystyle \sum_{r∊S_1} ζ^{r} \cdot  \displaystyle \sum_{r∊S_2} ζ^{r}

 \hspace{40pt}= \displaystyle \sum_{r_1∊S_1,r_2∊S_2} ζ^{r_1+r_2}

 \hspace{40pt} = \displaystyle \sum_{x∊F_p^{*}} N_xζ^{x}

ここで N_x= \# \{ x=r_1+r_2| r_1∊S_1,r_2∊S_2 \}  

 命題3により、N_xxS_0,S_1,S_2 のどれに属するかにのみ依存する。N_x x∊S_0 のとき N_0, \ x∊S_1 のとき N_1, x∊S_2 のとき N_2 とすると、

 \hspace{30pt} α_1α_2= \displaystyle \sum_{x∊S_{0}} N_0ζ^{x}+ \displaystyle \sum_{x∊S_{1}} N_1ζ^{x}+ \displaystyle \sum_{x∊S_{2}} N_2ζ^{x} 

 \hspace{40pt} =N_0α_0+N_1α_1+N_2α_2

 \hspace{30pt} α_2α_0= \displaystyle \sum_{r∊S_2} ζ^{r} \cdot  \displaystyle \sum_{r∊S_0} ζ^{r}

 \hspace{40pt}= \displaystyle \sum_{r_0∊S_0,r_2∊S_2} ζ^{r_0+r_2}

 \hspace{40pt} = \displaystyle \sum_{x∊F_p^{*}} N'_xζ^{x}

 ここで N’_x= \# \{ x=r_0+r_2| r_0∊S_0,r_2∊S_2 \}

 命題3の議論と同様に N’_xS_0,S_1,S_2 ごとに同一であるので、それぞれN'_0,N’_1,N’_2 とする。

β∊S_2 を取ると βx=βr_0+βr_2βr_0∊S_2, βr_2∊S_1

したがって、x∊S_0 に対し 

 N’_0=N’_x= \# \{ x=r_0+r_2| r_0∊S_0,r_2∊S_2 \} \\ \hspace{20pt} = \# \{ βx=r’_2+r’_1| r’_2∊S_2,r’_1∊S_1 \} =N_2

同様に N'_1=N_0, N’_2=N_1

よって

 \hspace{30pt} α_2α_0= \displaystyle \sum_{x∊S_{0}} N'_0ζ^{x}+ \displaystyle \sum_{x∊S_{1}} N'_1ζ^{x}+ \displaystyle \sum_{x∊S_{2}} N'_2ζ^{x}

 \hspace{40pt} = \displaystyle \sum_{x∊S_{0}} N_2ζ^{x}+ \displaystyle \sum_{x∊S_{1}} N_0ζ^{x}+ \displaystyle \sum_{x∊S_{2}} N_1ζ^{x}

 \hspace{40pt} =N_2α_0+N_0α_1+N_1α_2

同様に

 \hspace{30pt} α_0α_1=N_1α_0+N_2α_1+N_0α_2

よって

 \hspace{30pt} α_0α_1+α_1α_2+α_2α_0=(N_0+N_1+N_2)(α_0+α_1+α_2)

 \hspace{40pt} =-(N_0+N_1+N_2)

命題3の証明で示したように、

 \hspace{30pt} (N_0+N_1+N_2)=(p-1)/3 

よって

 \hspace{30pt} α_0α_1+α_1α_2+α_2α_0=-(p-1)/3

 

 次に α_0α_1α_2 を求める。

α_0^{2}+α_1^{2}+α_2^{2}=(α_0+α_1+α_2)^{2}-2(α_0α_1+α_1α_2+α_2α_0)

 \hspace{40pt} =1+2(p-1)/3

α_0(α_1α_2)=α_0(N_0α_0+N_1α_1+N_2α_2)

α_1(α_2α_0)=α_1(N_2α_0+N_0α_1+N_1α_2)

α_2(α_0α_1)=α_2(N_1α_0+N_2α_1+N_0α_2)

これらを加えて

3α_0α_1α_2=(α_0^{2}+α_1^{2}+α_2^{2})N_0

 \hspace{40pt} +α_0α_1(N_1+N_2)+α_1α_2(N_1+N_2)+α_2α_0(N_1+N_2)

 \hspace{40pt} = \{ 1+2(p-1)/3 \} N_0+ \{ -N_0+(p-1)/3 \}  \{ -(p-1)/3 \}

 \hspace{40pt} =N_0+3(p-1)/3N_0- \{ (p-1)/3 \} ^{2}

 

ここで α_0,α_1,α_2 を解とする方程式

F(t)=(t-α_0)(t-α_1)(t-α_2) \\ \hspace{10pt} =t^{3}+t^{2}-(p-1)/3 \cdot t- [ N_0+3(p-1)/3 \cdot N_0- \{ (p-1)/3 \} ^{2} ]/3

の判別式 D_F平方根を考える。

 \pm \sqrt D_F=(α_0-α_1)(α_1-α_2)(α_2-α_0)

 \hspace{20pt} =-α_1α_2(α_1-α_2)-α_2α_0(α_2-α_0)-α_0α_1(α_0-α_1)

 \hspace{20pt} =-(N_0α_0+N_1α_1+N_2α_2)(α_1-α_2)

 \hspace{20pt}  -(N_2α_0+N_0α_1+N_1α_2)(α_2-α_0)

 \hspace{20pt}  -(N_1α_0+N_2α_1+N_0α_2)(α_0-α_1)

 \hspace{20pt} =N_0 \{ -α_0(α_1-α_2)-α_1(α_2-α_0)-α_2(α_0-α_1) \}

 \hspace{20pt} +N_1 \{ -α_1(α_1-α_2)-α_2(α_2-α_0)-α_0(α_0-α_1) \}

 \hspace{20pt} +N_2 \{ -α_2(α_1-α_2)-α_0(α_2-α_0)-α_1(α_0-α_1) \}

 \hspace{20pt} =(N_2-N_1)(α_0^{2}+α_1^{2}+α_2^{2}-α_1α_2-α_2α_0-α_0α_1)

 \hspace{20pt} =(N_2-N_1)(1+3(p-1)/3)=(N_2-N_1)p

 

次に、β_i=1+3α_i とおく。すると

β_0+β_1+β_2=0

β_0β_1+β_1β_2+β_2β_0=3+6(α_0+α_1+α_2)+9(α_0α_1+α_1α_2+α_2α_1)

 \hspace{40pt} =3-6+9 \{ -(p-1)/3 \} =-3p

β_0β_1β_2=1+3(α_0+α_1+α_2)+9(α_0α_1+α_1α_2+α_2α_1)+27α_0α_1α_2

 \hspace{20pt}=1-3+9 \{ -(p-1)/3 \} +9 [ N_0+3(p-1)/3N_0- \{ (p-1)/3 \} ^{2} ]

 \hspace{20pt} =-2-3(p-1)+9N_0+9(p-1)N_0-(p-1)^{2}

 \hspace{20pt} =-p+9pN_0-p^{2}=p(9N_0-p-1)

よって  β_0,β_1,β_2 を解とする方程式は

 G(t)=t^{3}-3pt-p(9N_0-p-1)

判別式 D_G

 D_G=-4(-3p)^{3}-27 \{ p(9N_0-p-1) \} ^{2}=4 \cdot 27p^{3}-27 \cdot p^{2}(9N_0-p-1)^{2}

一方、β_i-β_j=3(α_i-α_j) なので

 D_G=27^{2}D_F  よって

 27(N_1-N_2)^2=4*p-(9N_0-p-1)^{2}

 4p=(9N_0-p-1)^{2}+27(N_1-N_2)^{2}

 p \equiv 1 \pmod 3 素数について  4p=A^{2}+27B^{2} 整数 A,B は  A \equiv 1 \pmod 3 \ B \gt 0 とすれば一意的に定まる(ここは[Sil]と同じなので省く)。 

よって、B=|N_1-N_2| , \  A=9N_0-p-1

よって N_0=(A+p+1)/9

 N_1=m, N_2=n, N_0=l+1 に注意すれば。

 

指数0の元の個数lは、l=N_0-1=(A+p-8)/9

N_1 \gt N_2 とすれば、すなわち m \gt n とすれば 

 \hspace{30pt} B=m-n

 \hspace{30pt} m+n=(p-1)/3-1-l=(-A+2p-4)/9

より   

 \hspace{30pt} m= (-A+9B+2p-4)/18

 \hspace{30pt} n= (-A-9B+2p-4)/18

N_2 \gt N_1 とすれば、すなわち、 n \gt m とすれば

 \hspace{30pt} m= (-A-9B+2p-4)/18

 \hspace{30pt} n= (-A+9B+2p-4)/18

よって

指数1と指数2の元の個数の大きい方の数:(-A+9B+2p-4)/18

指数1と指数2の元の個数の小さい方の数:(-A-9B+2p-4)/18

(解答終)

 

それにしても、ガウス和というのは不思議だ。