ES 地面の目印

以前の数学メモは、地面の目印 -エスワン- にあります。

メモ31 有限体上の楕円曲線に関する練習問題(その3)

1.はじめに

 Silverman Tate のRational Points on Elliptic Curves(以下,[Sil]と記す)の第4章の練習問題を(未解答を含め)解いてみた結果を記したメモの(その3)です。その2で問題4.8と4.10に言及したので今回はその解答の試みをメモしました。

2. 問題

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【問題4.8】

p \equiv 3 \pmod 4素数b \in \mathbb{F}_{p}^{*} とする。このとき、以下を示せ。
(a) v^{2}=u^{4}-4b(p-1) 個の解 (u,v) \ u,v \in \mathbb{F}_{p} を有する。
(b) (u,v) が(a)の解であれば、
   \hspace{10pt}\phi (u,v)=(\frac{1}{2}(u^{2}+v),\frac{1}{2}u(u^{2}+v))楕円曲線 \hspace{10pt}C:y^{2}=x^{3}+bx の点である。
(c) (b)で定義される曲線 C について \# C( \mathbb{F}_{p})=p+1 である。

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解答の流れ

(a) 4b=u^{4}-v^{2}=(u^{2}-v)(u^{2}+v) より
a=u^{2}-v, \  a’=u^{2}+v とおくと、aa'=4b, \  b \in \mathbb{F}_{p}^{*} なので a,a' \in \mathbb{F}_{p}^{*} であり、a'=4b/a となる。 
 また、u^{2}=(a+a’)/2, \ v=(a’-a)/2 なので、a \in \mathbb{F}_{p}^{*} を与えれば(a)の解が2個あるか、1個もないことになる。 
 a, \ A が同じ u^{2} を定めるのは、
u^{2}=(a+a’)/2=(A+A’)/2 とすると a+4b/a=A+4b/A より、 a-A+4b(A-a)/(aA)=0 である。a≠A とすれば aA=4b  つまり、同じ u^{2} を与えるのは a,a' のみである。
 aF_{p}^{*} を動くとき、a’F_{p}^{*} を動く。u=0 とならなければ、a を与える解 (u,v) が2つ定まるが、a' も同じ u^{2} を与えるので解の個数は p-1 となる。u=0 となるのは a=-a’ のときである。つまり a^{2}=-4b のときである。この解の個数は0か2である。0のときは、すでに与えられた方程式の解の個数が p-1 個であることを示した。解が2個のときは、解でない (p-3) 個の a については、それぞれ2個解があるが、aa' でダブルカウントするので結局解の個数は (p-3) である。a=-a’ のときは u=0で解は一つであるが、a≠a' なので、a,a’ について解が一つづつ、計 p-1 個の解がある。

(b) x=1/2(u^{2}+v), \ y=1/2u(u^{2}+v), \  v^{2}=u^{4}-4b として (x^{3}+bx) の式の値を計算すると
\hspace{10pt}x^{3}+bx=\{1/2(u^{2}+v)\}^{3}+b \cdot 1/2(u^{2}+v)  \\ =1/8(u^{2}+v) \{(u^{2}+v)^{2}+4b \}=1/8(u^{2}+v) \{u^{4}+2u^{2} \cdot v+v^{2}+4b \} \\=1/8(u^{2}+v) \{u^{4}+2u^{2} \cdot v+u^{4} \}=1/4u^{2}(u^{2}+v) \{u^{2}+v \} \\= \{u(u^{2}+v) \}^{2}=y^{2} であるので(b)がいえた。

(c) v^{2}=u^4-4b であるので (u^{2}+v)(u^{2}-v)=4b したがって、u^{2}+v≠0 である。
 (x,y)= \phi (u,v)=\phi (u’,v’) とすると x≠0 であり、u=y/x, \ v=2x-u^{2} となる。したがって、\phi単射である。x=0 の解は (0,0) のみであるので、原点である無限遠点を加え \#C(F_{p})=p+1 である。

 

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【問題4.10】

p \equiv 2 \pmod 3素数c \in F_{p}^{*} とする。このとき、以下を示せ。

曲線 C:y^{2}=x^{3}+c について \#C(F_{p})=p+1

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解答の流れ

 F_{p}^{*} は乗法に関し位数 p-1巡回群をなし、3∤(p-1) なので、x≠0 のとき、x→x^{3}F_{p}^{*}→F_{p}^{*} の同型写像。したがって、xF_{p}^{*} を動くとき x^{3}F_{p}^{*} 全体を動く。また、x^{3}+cF_{p} から F_{p} への全単射F_{p} の元の個数は p 個であるが、その内訳は、0と p に関する平方剰余が (p-1)/2 個、平方非剰余が (p-1)/2 個であり、x^{3}+c が平方剰余のときに解が2個、平方非剰余のとき解は0個である。

 したがって、x^{3}+c≠0 の場合の CF_{p} 点は p-1 個である。 x^{3}+c=0 となる場合は解が一つ。これに原点を加え \#C(F_{p})=p+1 である。