1.はじめに
このメモは、「メモ34 有理数体上で定義されたある代数曲面上の曲線について」の続編である。その最後に、
の解で
の形のもののうち 、 のものを2つ示した。
この解が、さらに
, とするとき
ここで
の解になれば、「(1)の定める代数曲面上に有理点を有する楕円曲線が存在することになる。」と書いた。とても(1)の解はありそうもなかったが、その試みについて備忘録として記しておく。
2.有理数体上で定義された代数曲面上の4次曲線
メモ34で示した2つの4次曲線は下のとおりである。ここで
代数曲面とは(1)で示した の関係式で定義される曲面である。
また、 は、 , とするとき
を与える係数である。
\begin{array}{l|l|l} & \hspace{40pt} ア & \hspace{40pt} イ \\ \hline A & (-1331/500)\cdot (105\cdot t^{2} - 1)^{2} & (-27951/100)\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2} \\ & /(t\cdot (113\cdot t + 11)^{2})\cdot a^{3} & /(t\cdot (1155\cdot t+113)^{2})\cdot a^{3} \\ \hline B & 0 & 0 \\ \hline C & 11/5\cdot (11865\cdot t^{3} + 3465\cdot t^{2} + 339\cdot t & 11/5\cdot (121275\cdot t^{3} + 35595\cdot t^{2} + 3465\cdot t \\ & + 11)/ (113\cdot t + 11)/t\cdot a & + 113)/(1155\cdot t+113)/t\cdot a \\ \hline D & 0 & 0 \\ \hline E & (1/25)\cdot (14674275\cdot t^{4}+6384500\cdot t^{3} & (1/5)\cdot (308159775\cdot t^{4} + 133402500\cdot t^{3} \\ & +963490\cdot t^{2}+60500\cdot t+1331) & + 20233290\cdot t^{2} +1276900\cdot t + 27951) \\ & /(t\cdot (113\cdot t+11)^{2})\cdot a^{2} & /(t\cdot (1155\cdot t + 113)^{2})\cdot a^{2} \\ \hline F & 0 & 0 \\ \hline G & (-4/121)\cdot (11\cdot t+1)\cdot (105\cdot t+11) & (-4/121)\cdot (11\cdot t+1)\cdot (105\cdot t+11) \\ & \cdot (495\cdot t^{2}+150\cdot t+11)\cdot (2695\cdot t^{2} & \cdot (495\cdot t^{2}+150\cdot t+11)\cdot (2695\cdot t^{2} \\ & +350\cdot t+11)/(t\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2}) & +350\cdot t+11)/(t\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2}) \\ \hline H & (-1331/500) \cdot (105\cdot t^{2} - 1)^{2} & (-27951/100)\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2} \\ & /(t\cdot (113\cdot t + 11)^{2})\cdot a^{2} & /(t\cdot (1155\cdot t+113)^{2})\cdot a^{2} \\ \hline I & 1/5\cdot (1155\cdot t^{2}+230\cdot t+11)/t & 1/5\cdot (1155\cdot t^{2}+230\cdot t+11)/t \end{array}
が解 を持つとき、この一般解をパラメータ で表わすことができ、
に代入すると ( の有理式) の4次式 となるのであった。
3.4次曲線に有理点があるかどうかの確認
2.にあげた4次曲線(ア)、(イ)が有理点を持つかどうかについて、具体的に確認してみることとした。
方針としては、最初に が解を持つ を与える( または が平方のときは解が知られているのでその場合を除く)。 は の有理式なので と記すとき、 が の解とする。
そのとき、 は の解なので、その一般解は
である。この を に代入すると であるので
となり、 の2乗が4次多項式という平面曲線が得られる。
したがって、 の解 が得られれば、4次曲線が具体的に得られる。
以下、この解を求める。
(ア)の場合
より、
を変形して
右辺の{ }内を とおくと
は に関する2次不定方程式であり、
は、この不定方程式の解。したがって、
とすると は を満たす。
とおけば
は の解である。
(イ)の場合:
より
右辺の{ }内を とおくと
は に関する2次不定方程式であり、
はこの不定方程式の解。したがって、
とすると、 は を満たす。
とおけば
は の解である。
以上で、 を与えたとき4次曲線が具体的に求められた。
もう一度整理すると
は の解を与える有理数。ただし、 は平方でない。
\begin{array}{l|l|l} & \hspace{40pt} ア & \hspace{40pt} イ \\ \hline t_{0} & 2/55 \cdot (2 \cdot r_{0}^{2}-5) & -11/20/(4 \cdot r_{0}^{2}+1) \\ \hline z_{0} & -10/11^{2} \cdot (113 \cdot t_{0}+11) & 10/11^{2} \cdot t_{0} \cdot (1155 \cdot t_{0}+113) \\ & \cdot (8 \cdot r_{0}^{2}-9) / (105\cdot t_{0}^{2}-1) & \cdot (8 \cdot r_{0}^{2}-9)/(105 \cdot t_{0}^{2}-1) \end{array}
とするとき、 と略記すれば、
である。
4.計算をしてみる
3.にあげた方法で について、4次多項式を
ただし、 は整数、最大公約数は1
の形として具体的に求めたものを下に示す。
(ア)の場合
(イ)の場合
これをもとに、
ただし、 は を素因数分解したとき指数が偶数でない素因子の積
の有理点を magma(http://magma.maths.usyd.edu.au/calc/)により求めてみたが、有理点はありそうもなかった。 についても、同様であった。