1.はじめに
次のx,yに関する2元2次不定方程式の有理数解について、以前 「ある代数曲面上の有理点を無限個有する有理曲線について」を書いた。
(1)
ここで
その中で、 をパラメータとする以下の2つの解を得た。
但し は平方数
但し は平方数
を固定すれば についても上の不定方程式(1)は有理数解を有するが、多くの について同時に解となるようなもの、すなわち、パラメータ解的なものは見つからなかった。
のパラメータ解を実2次体で求める上で、この2元2次不定方程式のパラメータ解が必要となったので、今回、先の記事でも少し触れた以下の形式の解について検討してみた。
については後で触れる。
結論からいうと新しいものは何も出て来なかったが、備忘録として検討結果を書いておく。
2.復習
前の記事をいちいち参照するのも面倒なので、復習から始める。
不定方程式(1)において を明示的に示すと
となる。左辺を の項のみとし、 の次数についての降順で整理すると
となる。さらに、上式を変形すると
より とおくと、 と に関する楕円曲線のWeierstrass標準形
(2)
を得る。ここで、 と をパラメータ の2次式として、以下の形の(2)のパラメータ解を考える。なお、 について の1次の項が0でない場合は、1次式で置きかえれば1次の項は 0 にできるので、一般性を失わず以下の形としてよい。
(3)
この解、 から が平方であり、 であれば不定方程式(1)の解が得られることになる。
3.得られた結果について
結果から先に記すと、楕円曲線(2)の解はいろいろと得られたが、2元2次不定方程式(1)の解は、すでに知られているものしか得られなかった。表に得られた結果を記す。
\begin{array}{l|l} solution\ of\ (2) & solution\ of\ (1)\ got\ from\\ & the\ left \ solution\ of\ (2) \\ \hline X =10H \cdot z^{2}+10\cdot I-8 & x=-20\cdot (1-r^{2})\\y^{2}=-20H\cdot z^{2}-20\cdot I+16 & y=\pm 4\cdot \sqrt{(1-r^{2})} \\R =H\cdot z^{2}+I & \\ \hline X =10H \cdot z^{2}-10\cdot I+8 & x=20\cdot (1-r^{2}) \\y^{2}=-20H\cdot z^{2}-20\cdot I+16 & y=\pm 4\cdot \sqrt{(1-r^{2})} \\R =H\cdot z^{2}+I & \\ \hline X =z & \\y^{2}=-1/452 \cdot z^{2}-226256/113 & no \\R =1/9040\cdot z^2+516/565 & \\ \hline X =121/125\cdot z^{3}+16/5\cdot z & x=\pm 160/11\cdot t\cdot (t^{4} - t^{2} + 1)/(1-t^{2})^{3} \\y^{2}=16/25 \cdot z^{2} & y=8/11\cdot 2t/(1-t^2) \\R =121/125\cdot z^{2}+5/4 & r=(1+t^{2})/(1-t^{2}) \\ \hline X =21/25\cdot z^{3}-16/5\cdot z & \\y^{2}=16/5 \cdot z^{2} & no \\R =21/25\cdot z^2+4/5 & \\ \hline X =Az^{3}+Cz & \\y^{2}=Ez^{2}+G & \\R =H z^2+I & \\ A=-1331/500\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2}/(t\cdot (113\cdot t+11)^{2}) & \\ C=11/5\cdot (11865\cdot t^{3}+3465\cdot t^{2}+339\cdot t+11) \\ /(113\cdot t+11)/t & \\ E=(1/25)\cdot (14674275\cdot t^{4}+6384500\cdot t^{3} \\ +963490\cdot t^{2}+60500\cdot t+1331)/(t\cdot (113\cdot t+11)^{2}) & not\ known \\ G=(-4/121)\cdot (11\cdot t+1)\cdot (105\cdot t+11)\cdot (495\cdot t^{2} \\ +150\cdot t+11)\cdot (2695\cdot t^{2}+350\cdot t+11)/(t\cdot (105\cdot t^{2}-1)^2) & \\ H=-1331/500\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2}/(t\cdot (113\cdot t+11)^{2}) & \\ I=1/5\cdot (1155\cdot t^{2}+230\cdot t+11)/t & \\ \hline X =Az^{3}+Cz & \\y^{2}=Ez^{2}+G & \\R =H z^2+I & \\ A=-27951/100\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2}/t/(1155\cdot t+113)^{2} & \\ C=11/5\cdot(121275\cdot t^{3} + 35595\cdot t^{2} + 3465\cdot t \\ + 113)/(1155\cdot t+113)/t & \\ E=1/5\cdot (308159775\cdot t^{4}+133402500\cdot t^{3} \\ +20233290\cdot t^{2}+1276900\cdot t+27951)/t/(1155\cdot t+113)^{2} & not\ known \\ G=(-4/121)\cdot (11\cdot t+1)\cdot (105\cdot t+11)\cdot (495\cdot t^{2} \\ +150\cdot t+11)\cdot (2695\cdot t^{2}+350\cdot t+11)/(t\cdot (105\cdot t^{2}-1)^2) & \\ H=-27951/100\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2}/t/(1155\cdot t+113)^{2} & \\ I=1/5\cdot (1155\cdot t^{2}+230\cdot t+11)/t & \end{array}
4.楕円曲線 (2) のパラメータ解を求める
それでは楕円曲線(2)の解で(3)の形の解を求める。
4-1 未定係数法
(3)を(2)に代入すると の6次式が得られるが、定数項からzの6次の係数まで0となることから、 に関する以下の①~⑦式が成立する。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
4-2 の場合
②より したがって、 または
4-2-1 の場合
③より よって、④は成立。
⑤ より
⑥ より
⑦は とおくと
となり、 は(2)の解である。
よって、(2)の解 を一つ与えると
が (2) の解となる。を改めて とおくと
このとき2番目の式は という解をもつので 有理式のパラメータ解をもつことに注意。
具体的には とおくとき
(4)
で与えられる。
であるので、(1)の解の疑似的なパラメータ解として、(2) の解 で が平方となる解について
を(4)で与えるとき
は(1)の解である。
4-2-2 A=F=0 の場合
改めて①~⑦を書き直すと
①
② は成立
③
④
⑤
⑥
⑦
④、⑥より または かつ
①より であるので または である。
4-2-2-1 C=0の場合
4-2-2-1-1 H≠0、E=-20Hの場合
③、⑤、⑦は以下のとおりとなる。
③
⑤
⑦
③より とおくと
これを⑤、⑦に代入して
⑤
⑦
を得る。 ⑤より ⑦に をかけ、これを代入すると⑦式より
を得る。したがって、 または
のとき
よって
は、(2)の解。 この場合、 なので、これを1番目と2番目の式に代入すると
よって、
これは、これまでに知られている(1)の解である。
のとき
よって
は、(2)の解。 この場合も同様に
これも、これまでに知られている(1)の解である。
4-2-2-1-2 H=0の場合
③、⑤、⑦は以下のとおりとなる。
③
⑤
⑦
③より となるので、⑤ は となる。
は有理数解を持たないので である。したがって、⑦を満たすD,G,Iが解となる。
4-2-2-2 B=D=0の場合
4-2-2-2-1 H≠0かつE=-20Hの場合
③、⑤、⑦は以下のとおりとなる。
③
⑤
⑦
よって ③ より これを⑤,⑦に代入し、
⑤
⑦
を得る。したがって
であるので
は(2)の解。 を改めて とおくと
は(2)の解。 2番目の の式は有理数解を持たない。 よってこの解は(1)の解ではない。
4-2-2-2-1 H=0の場合
③、⑤の式は以下のとおりとなる。
③
⑤
よって、③より
となる。
また、⑤より
となる。これを⑦に代入して
⑦
よって、 である。したがって、 は以下のとおりとなる。
よって、
を改めて とおけば
は(2)の解である。しかし、(1)の解とはならない。
4-3 A≠0の場合
4-1 に記した①~⑦を満たす を求めればよい。
⑦の解 は、 とおいた時の(2)の解である。そこで、この解が与えられたとする。
①より、 なので である。 とおくと
さらに②より よって
④に をかけると
よって
⑥より
以上より、 は と の有理式で表わされ、 は の有理式、 は の有理式で表される。よって変数を に減らすことができる。
とおくと
また、 が有理数の時 なので、
×②、×③、×④、×⑤、×⑥がそれぞれ0になるとすると ×②と ×⑥は定め方から成り立つ。残りは、それぞれ
×③:
×④:
×⑤:
となる。したがって、(2)の解法としては、⑦の解 を求め、さらに、上の3式が成り立つよう を定めればよい。
×④より
D=0 または
後者とすると
は有理数解を持たないので、 とすると これは に矛盾。よって より
これを の満足する2次方程式とみて判別式をとると、
これは平方数ではないので、
と矛盾。したがって、 である。
以下 D=0 として話を進める。
このとき ×④ は成立する。
⑦より
よって
したがって の場合をのぞき である。
のとき
この場合、 である。
×③、×⑤ からそれぞれ
×③ →
×⑤ →
を得る。 を上の式に代入して よって
を上の式に代入して、 よって
以上より、以下の二つの(2)の解を得る。
2番目の式より これを に代入して
に注意すれば 2番目の式は
これは をパラメータとして
という解を有する。
また、
よって (1) の解を得る。これは以前に知られていた解。
は(2)の解
2番目の式より これは(1)の解にはならない。
のとき
×③、×⑤ から
×③:
これより
この2式より を消去して
よって
よって、
または
ちなみに が前者の時 のとき
よって
は上に記載のとおり。
は上のとおり。
次に を求める。
したがって、 のとき
を与えた時うまくいくことをsagemathで確認した。(2種類のCについて)結局azの関数となる。
次に を の有理式として表わす。
とするとき
上の について
よって
このとき
下の について、同様に
よって
このとき、
ちなみに 上の で とすると
下の で とすると
のケースの(2)の解をまとめると
のとき以下のア、イは(2)の解
\begin{array}{l|l|l} & ア & イ \\ \hline A & (-1331/500)\cdot (105\cdot t^{2} - 1)^{2} & (-27951/100)\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2} \\ & /(t\cdot (113\cdot t + 11)^{2})\cdot a^{3} & /(t\cdot (1155\cdot t+113)^{2})\cdot a^{3} \\ \hline B & 0 & 0 \\ \hline C & 11/5\cdot (11865\cdot t^{3} + 3465\cdot t^{2} + 339\cdot t & 11/5\cdot (121275\cdot t^{3} + 35595\cdot t^{2} + 3465\cdot t \\ & + 11)/ (113\cdot t + 11)/t\cdot a & + 113)/(1155\cdot t+113)/t\cdot a \\ \hline D & 0 & 0 \\ \hline E & (1/25)\cdot (14674275\cdot t^{4}+6384500\cdot t^{3} & (1/5)\cdot (308159775\cdot t^{4} + 133402500\cdot t^{3} \\ & +963490\cdot t^{2}+60500\cdot t+1331) & + 20233290\cdot t^{2} +1276900\cdot t + 27951) \\ & /(t\cdot (113\cdot t+11)^{2})\cdot a^{2} & /(t\cdot (1155\cdot t + 113)^{2})\cdot a^{2} \\ \hline F & 0 & 0 \\ \hline G & (-4/121)\cdot (11\cdot t+1)\cdot (105\cdot t+11) & (-4/121)\cdot (11\cdot t+1)\cdot (105\cdot t+11) \\ & \cdot (495\cdot t^{2}+150\cdot t+11)\cdot (2695\cdot t^{2} & \cdot (495\cdot t^{2}+150\cdot t+11)\cdot (2695\cdot t^{2} \\ & +350\cdot t+11)/(t\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2}) & +350\cdot t+11)/(t\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2}) \\ \hline H & (-1331/500) \cdot (105\cdot t^{2} - 1)^{2} & (-27951/100)\cdot (105\cdot t^{2}-1)^{2} \\ & /(t\cdot (113\cdot t + 11)^{2})\cdot a^{2} & /(t\cdot (1155\cdot t+113)^{2})\cdot a^{2} \\ \hline I & 1/5\cdot (1155\cdot t^{2}+230\cdot t+11)/t & 1/5\cdot (1155\cdot t^{2}+230\cdot t+11)/t \end{array}
この2つの(2)の解で(1)の解になる場合はあるだろうか。
なので
を改めて と置けば
とおくと (ア)の場合
これを と に関する不定方程式とみれば、 を具体的に与えた時に1つでも解を持ては、 はパラメータ の2次以下の多項式の商として表わされる。
これを に代入すれば の4次式 = となる。この4次曲線が有理点を持てば、つまり(1)の解が求まれば、(1)の定める代数曲面上に有理点を有する楕円曲線が存在することになる。
に具体的な数値を入れて、いくつかのケースを調べてみたが(1)の解はありそうもなかった。これについては、また、別の記事にまとめたい。