1.はじめに
去る2023年2月11日に開催された第26回日曜数学会で、2つの実2次体の数の5乗和を2通りで表すパラメータ解を示した。以下の通りである。
--------------------------------------------------------------------
命題
のとき、
特に、 とすれば実2次体でのパラメータ解を与える。 (1)
--------------------------------------------------------------------
このパラメータ解から、以下の超楕円曲線に有理点があれば、2つの有理整数の5乗和を2通りに表す例が得られることになる。但し、私の知人が調べたところ、有理点を持つ可能性は非常に小さいとのことであった。
2. 新たなパラメータ解
今回、以下に示す新たなパラメータ解が見つかった。
-------------------------------------------------------------------
但し、
のとき、
なお、ルート内は t<-1, 0<t<1で正となり実2次体の解を与える。(2)
-------------------------------------------------------------------
例えばt=-2とし、共通因子を省くと
となる。
この場合にも以下の超楕円曲線に(0,0)以外の有理点があれば、2つの有理整数の5乗和を2通りに表す例が得られることになる。一見したところ、やはり (0,0) 以外の有理点を持つ可能性は極めて低そうである。
3.パラメータ解を求めた背景
パラメータ解は以下の楕円曲線の有理点と関係がある。
(3)
26回日曜数学会で示したように、上記パラメータ解 (1)は 楕円曲線(3)の以下の有理点に対応している。
今回示したパラメータ解(2)は、tを平方数とするとき
に対応する解である。
のとき 楕円曲線(3)の有理点群のランクをsagemathで求めると3となり、その生成元とP, Qの関係からPとQは独立であることがわかった。
また、 が平方数である9,16,1/4,1/9のときの有理点群のランクも3以上となった。
t=25,36,64のときは、sagemathでは有理点群のランクは求まらなかったが、知人の協力により、これらの時もランクが3以上となることがわかった。
したがって、(3)において を で置きかえた体 上の楕円曲線 について、P,Q以外にも独立な有理点があるかもしれない。そうすると、また別のパラメータ解が得られる。