ES 地面の目印

以前の数学メモは、地面の目印 -エスワン- にあります。

メモ33  x^5+y^5=z^5+w^5 の実2次体解を与えるパラメータ解について

1.はじめに

 去る2023年2月11日に開催された第26回日曜数学会で、2つの実2次体の数の5乗和を2通りで表すパラメータ解を示した。以下の通りである。

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命題

x=60t(t^{5}+1)(89t^{10}+78t^{5}+89)+t(71t^{10}-18t^{5}+11)\sqrt{30(t^{5}+1)(89t^{10}+78t^{5}+89)}

y=60t(t^{5}+1)(89t^{10}+78t^{5}+89)-t(71t^{10}-18t^{5}+11)\sqrt{30(t^{5}+1)(89t^{10}+78t^{5}+89)}

z=60t^{3}(t^{5}+1)(89t^{10}+78t^{5}+89)+(11t^{10}-18t^{5}+71)\sqrt{30t(t^{5}+1)(89t^{10}+78t^{5}+89)}

w=60t^{3}(t^{5}+1)(89t^{10}+78t^{5}+89)-(11t^{10}-18t^{5}+71)\sqrt{30t(t^{5}+1)(89t^{10}+78t^{5}+89)}

のとき、 x^{5}+y^{5}=z^{5}+w^{5}

 特に、t=T^{2} とすれば実2次体でのパラメータ解を与える。  (1)

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 このパラメータ解から、以下の超楕円曲線に有理点があれば、2つの有理整数の5乗和を2通りに表す例が得られることになる。但し、私の知人が調べたところ、有理点を持つ可能性は非常に小さいとのことであった。

 

                 y^{2}=30(x^{10}+1)(89x^{20}+78x^{10}+89)

 

2. 新たなパラメータ解

 今回、以下に示す新たなパラメータ解が見つかった。

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x=5t^{4}(t^{5}-2)(2t^{5}+1) \cdot A +t \cdot B \sqrt{-5t(t^{10}+1)(t^{5}-2)(2t^{5}+1) \cdot A}

y=5t^{4}(t^{5}-2)(2t^{5}+1) \cdot A -t \cdot B \sqrt{-5t(t^{10}+1)(t^{5}-2)(2t^{5}+1) \cdot A}

z=5t^{8}(t^{5}-2)(2t^{5}+1) \cdot A + C \sqrt{-5t(t^{10}+1)(t^{5}-2)(2t^{5}+1) \cdot A}

w=5t^{8}(t^{5}-2)(2t^{5}+1) \cdot A - C \sqrt{-5t(t^{10}+1)(t^{5}-2)(2t^{5}+1) \cdot A}

 但し、  A=t^{20}-4t^{15}+8t^{10}+4t^{5}+1

                     B=t^{20}-4t^{15}-2t^{10}-t^{5}+1

                     C=t^{20}+t^{15}-2t^{10}+4t^{5}+1

のとき、 x^{5}+y^{5}=z^{5}+w^{5}

 なお、ルート内は t<-1, 0<t<1で正となり実2次体の解を与える。(2)

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 例えばt=-2とし、共通因子を省くと

(6784216656+2355266 \sqrt{28974258635})^{5}+(6784216656-2355266 \sqrt{28974258635})^{5} \\ =(108547466496+1013633 \sqrt{28974258635})^{5} +(108547466496-1013633 \sqrt{28974258635})^{5} \\ =1753609489201111261174218821946072048979459695295083274752

となる。

 この場合にも以下の超楕円曲線に(0,0)以外の有理点があれば、2つの有理整数の5乗和を2通りに表す例が得られることになる。一見したところ、やはり (0,0) 以外の有理点を持つ可能性は極めて低そうである。

             y^{2}=-5x(x^{10}+1)(x^{5}-2)(2x^{5}+1)(x^{20}-4x^{15}+8x^{10}+4x^{5}+1)

 

3.パラメータ解を求めた背景

 パラメータ解は以下の楕円曲線の有理点と関係がある。

 

    Y^{2}=X \{ X^{2}-200t^{5}X+100(16t^{20}+68t^{10}+16) \}       (3) 

 

 26回日曜数学会で示したように、上記パラメータ解 (1)は 楕円曲線(3)の以下の有理点に対応している。

 

     P=(20t^{10}+80,-200(t^{5}-1)(t^{10}+4))

 

 今回示したパラメータ解(2)は、tを平方数とするとき

 

      Q=(100t^{5},400t^{5/2}(t^{5}-1)(t^{5}+1))

 

に対応する解である。

 t=4 のとき 楕円曲線(3)の有理点群のランクをsagemathで求めると3となり、その生成元とP, Qの関係からPとQは独立であることがわかった。

 また、t が平方数である9,16,1/4,1/9のときの有理点群のランクも3以上となった。

 t=25,36,64のときは、sagemathでは有理点群のランクは求まらなかったが、知人の協力により、これらの時もランクが3以上となることがわかった。

 したがって、(3)において tt^{2} で置きかえた体 \mathbb{Q} (t) 上の楕円曲線 について、P,Q以外にも独立な有理点があるかもしれない。そうすると、また別のパラメータ解が得られる。