1. はじめに
(その3)の最後に「既存のタクシーnからランクの大きな楕円曲線 が得られるのではないだろうか。」と書いたが、いくつか試してみたので、それをメモとして残して、このタイトルでのメモは終わりにしようと思う。
(その2)の「1.はじめに」 に書いたとおり、n番目のタクシー数Ta(n)は、以下のとおり。
Ta(1)=2
Ta(2)=1729
Ta(3)=87539319
Ta(4)=6963472309248
Ta(5)=48988659276962496
Ta(6)=24153319581254312065344
ウィキペディアでは、Ta(7)以降は、上限が分かっているとして、以下があげられている。
Ta(7) ≦ 24885189317885898975235988544
Ta(8) ≦ 50974398750539071400590819921724352
Ta(9) ≦ 136897813798023990395783317207361432493888
Ta(10) ≦ 7335345315241855602572782233444632535674275447104
Ta(11) ≦ 87039729655193781808322993393446581825405320183232000
Ta(12) ≦ 16119148654034302034428760115512552827992287460693283776000
この不等式の右辺を便宜上T'a(n)と記すこととする。
2つの自然数の立方数の組としてこれらの数を生成するn個(n=3,....12)の自然数の組について、それらから得られる楕円曲線 の有理点が一次独立かどうか調べたのでメモとして残しておく。
2. 楕円曲線の有理点の独立性をチェックする一方法
楕円曲線の有理点の独立性をチェックする簡便な方法が、「Rank5以上の楕円曲線について」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/39/4/39_4_358/_article/-char/ja/)という論文に載っていたので、その方法を用いることとした。方法の概略は以下のとおりである。
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楕円曲線 のn個の有理点 が独立でないとすると
となる整数 が存在する。よって、
は0か1 となる有理点 が存在する。
とすると、「メモ4 (楕円曲線の加法公式)」の最後に記した2倍の式のx座標に着目すると、
これを整理して
よって、この方程式が有理数体上で既約であることを示せば は独立となる。
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今関心があるのは、楕円曲線 であるので であり、
が有理数体上で既約であるかどうかを確かめれば良い。なお、可約である場合は、独立であるのかそうでないのかはわからない。
3. 独立性の計算結果
Ta(n)等から得られる の有理点について、Sagemath を用いて、独立性を確かめた。その結果は表のとおりである。n=3,4については,Ta(3),Ta(4)以外に小さなタクシー3,4についても確かめた。最大でランク7以上の楕円曲線が得られた。
なお、独立かどうか不明と書いたのは本方法では分からなかったの意味である。
表にあげたn=3のケース、つまり5つのタクシー3では、m=175959000の場合を除いてランクが3以上である。「メモ24の4.タクシー3の探索」ではタクシー2から得られる2つの有理点の線形結合のなかから3番目の有理点を求めている。したがって、タクシー3から生じる楕円曲線の有理点のなす群のランクが3以上の場合は、その方法ではタクシー3を求めることはできない。
ところで、
であり、 は関係~により同値(つまり有理数の3乗を掛ければ他方が得られる)であり、ランク7以上の楕円曲線の有理点から得られる。また、 と も関係~について同値である。