1. はじめに
「メモ38 自然数を2通りの自然数の組による2変数5次斉次式の値としてあらわす」では、有理数を2通りの有理数の組による2変数5次斉次式の値としてあらわすケースについて紹介した。
2変数5次斉次式としては、以下の形のものを考えた。
メモ38は、 及び の分母の公倍数の5乗を掛ければ が整数になることに注意すれば、自然数を2通りの整数の組による2変数5次斉次式の値としてあらわすケースといっても同じである(この「整数の組」を「自然数の組」とする場合は、さらに制限がかかることになる)。
このメモでは、a,bが整数の場合、つまり、自然数を2通りの整数の組による2変数整数係数5次斉次式の値としてあらわすケースについて検討する。
また、関連して、 という形の代数曲線(特殊な場合を除き非特異)の有理点の例を示した。
最後に、自然数を2通りの自然数の組による2変数自然数係数5次斉次式の値としてあらわせるケースは、あまり見つけられなかったことを記した。
2.メモ38から得られたケース
メモ38に記したケースのうち、自然数を2通りの整数の組による2変数整数係数5次斉次式の値としてあらわすケースとして明示的に示したのは、以下のとおりである。
① のとき
よって であれば
特に 自然数 について
② のとき
有理数 について、
③ のとき
有理数 について、
④ のとき
このうち、2通りの自然数の組で自然数をあらわすことができるのは、①、②、③に限る。なおかつ、 ともに自然数となるのは、①のケースのみである。
3. F(x,1)が重根を持たない2変数整数係数5次斉次式により自然数を2通りの整数の組で表現できる例
にあげた例は がいずれも重根を持つケースであった。ここでは、 の4つの例から導ける が重根を持たない例を紹介する。
メモ38で見たように、2変数5次斉次式
について、 かつ となる4つの有理数 とその時のFの値 を与えれば、 は定まる(メモ38命題1)。
メモ38の【結果3】より、 が重根を持つ場合は、以下の場合に限られる。
以下では、いずれの場合も を与えたとき、 は の関数となり、特定の を除き、 が重根を持たない例を得ている。
① からの算出
とおくと
となる。
整数 について かつ を中心として半径 の円内に が入り、 であれば は自然数である。
例: のとき
このとき とすれば
とすれば
② からの算出
を整数として
とすると
となる。
よって、 でない整数 について になるためには、
かつ または かつ が必要。
このとき、 が同時に正になることはない。
例: のとき
③ からの算出
とすると
となる。
したがって、整数 に対し がともに非負整数となることはない。また、自然数 について であれば は自然数。
例: とすれば、
④ から算出
とすると
となる。
したがって、整数 に対し がすべて自然数になることはない。
4. 非特異曲線 の有理点
3. ①~④にあげた例から それぞれ という形の非特異曲線の有理点が得られる。
① からの算出
3.①で とすると
となり
つまり
したがって、 は の如何にかかわらずこの5次曲線の有理点である。
② からの算出
3.②で とすると
となり
つまり
より は の如何にかかわらずこの5次曲線の有理点である。
③ からの算出
3.③で とすると
となり
つまり
より
は の如何にかかわらずこの5次曲線の有理点である。
④ から算出
3.④で または
( 非負整数) なお、 のとき となることに注意。
のとき
となり
について
と は5次曲線の有理点である。
5. 最後に
結局、自然数を2通りの整数の組による2変数自然数係数5次斉次式の値としてあらわすケースとして求められたのは、以下のとおりである。
整数 について
・ かつ を中心として半径 の円内に が入る。
・
のとき
はすべて自然数である。