ES 地面の目印

以前の数学メモは、地面の目印 -エスワン- にあります。

ある代数曲面上の有理点を無限個有する有理曲線について

 この記事は、「日曜数学 Advent Calendar 2022」の12月13日(火)の記事として書きました。

 

1.はじめに

 第25回日曜数学会で x^{5}+y^{5}=z^{5}+w^{5} の解を実2次体で求めた例を発表した。この中で以下の x,y に関する2元2次不定方程式の解を用いた。

      x^{2}-my^{2}=-a            (1)

          ここで m=26-23r^{2}+1/5 \cdot r^{4}

                         a=16(1-r^{2})(1+2r^{2}+1/5 \cdot r^{4})

 発表の中で用いた解は  

     x=20(1-r^{2}), y=4\sqrt{(1-r^{2})}           (2)

というものであった。

 上の不定方程式を x,y,r の定める \mathbb{Q} 上の代数曲面と考えれば、この解は以下のパラメータ表示を有する代数曲面上の有理曲線と考えられる。 

         x=80t^{2}/(1+t^{2})^{2}, y=8t/(1+t^{2}),r=(1-t^{2})/(1+t^{2})

 この代数曲面は r を固定すれば、有理曲線を表わすので、有理曲面と思えるが、代数曲面についての知識がないので、この代数曲面が分類上どのような曲面であり、その上の有理曲線などの代数曲線がどのくらいあるのかやその求め方については皆目わからない。一方で、5乗和を2通りに表わす有理解を求める上で、上の2元2次不定方程式の解を求めることが重要と考えていた。このため、極めて初等的な方法で2元2次不定方程式の解を求める試みを続けていた。

 ここでは、代数曲面上の有理点を無限個有する有理曲線として、その結果を記しておく。

 なお、一時、さまざまな無数の有理点をもつ有理曲線が見つかったと思って、日曜数学アドベントカレンダーに登録したが、あたりまえの結果しか出なかったのは残念である。

 

2.解を r^{2} の代数式と想定して、2元2次不定方程式 x^{2}-my^{2}=-a を解く

 不定方程式(1)において、r は偶数乗の形でのみ現れる。また、既に知られている解が

  x=20(1-r^{2}), y=4\sqrt{(1-r^{2})}

であったので、まず、x^{2}y^{2}r^{2}多項式として表わせると仮定して解くこととした。

 ar の6次式、mr の4次式であることから、

        x^{2}=Ar^{6}+Br^{4}+Cr^{2}+D

     y^{2}=Er^{2}+F                                

とおき、x^{2}-my^{2}+a=0 となるよう A,B,C,D,E を定めることとした。

   A=0 のとき、  

     x=\pm 20(1-r^{2}), y=\pm 4\sqrt{(1-r^{2})}           (3)

という解が得られた。これは既に知られている解である。

  A≠0 のとき、

     x=\pm 20/11 \cdot (r^{2}+3)\sqrt{(r^{2}-1)}, y=\pm 8/11\cdot \sqrt{(r^{2}-1)} (4)

という解が得られた。

  (3) の解において r の絶対値としてはピタゴラス数の3組の数のうち、最大でない数を最大数で割った数のみ可能である。例えば、3/5,4/5,5/13など。

  (4) の解においてはピタゴラス数の3組の数のうち、最大数を最大でない数で割った数のみ可能である。例えば、5/3,5/4,13/5など。

 ところが、r に具体的な有理数を与え、不定方程式 (1) の解があるかないか、平方剰余の相互法則を用いて調べると、r=2/3,5/6,3/8,1/9 など (3),(4) に当てはまらないが、(1)の解となる r が多数出てくる。

 そこで、x^{2}y^{2}r^{2}多項式ではなく有理式と想定すれば、他の解が出てくるはずと考え、y^{2} を以下のような有理式として解くこととした。

      y^{2}=(Ar^{2}+B)^{2}/(Cr^{2}+D)

 ところが、未知数がたくさんの線形でない方程式が得られるだけで、具体的な解は得られそうもなかった。他にもいくつかの有理式を想定して試みたがすべてうまくいかなかった。

 

3.y を定数と考え、xr に関する代数曲線と考えて解く

 解(2)が r^{2} の代数式であったので、これまで r を定数と考え、x^{2}y^{2}r^{2}多項式や有理式で次数が小さなものと想定して解を求めようとしてきた。不定方程式(1)は r について6次式であり、r を未知数と考えるのはすこし難しいと考えたからである。

 しかし、他に手もないので、ダメもとで y を定数と考え、xr の2元不定方程式と考えることにした。r を明示的に示すと(1)は以下のとおりとなる。

      x^{2}-(26-23r^{2}+1/5 \cdot r^{4})y^{2}=-16(1-r^{2})(1+2r^{2}+1/5 \cdot r^{4})

 左辺を x^{2} の項のみとし、r の次数についての降順で整理すると

      x^{2}=16/5 \cdot r^{6}+(1/5 \cdot y^{2}+144/5)r^{4}-(23y^{2}+16)r^{2}+26y^{2}-16  

となり、超楕円曲線が出てくる。この解など簡単に求まりそうもないなと思った。しかしよく見ると、右辺は r の偶数乗しか出てこないので、xr^{2} に関する曲線と考えれば、楕円曲線になるではないか。そうすれば、y に具体的な値を与えればsagemathで有理点が求まる場合がある。個々の y について有理点を求めてもあまり意味はないかもしれないが、一応やってみようと思った。

 上式を変形すると

(2/5\cdot x)^{2}=(4/5\cdot r^{2})^{3}+(1/5\cdot y^{2}+144/5)/4\cdot (4/5\cdot r^{2})^{2} \\ \hspace{30pt} -(23y^{2}+16)/5\cdot (4/5\cdot r^{2})+4/5^{2}\cdot (26y^{2}-16)           

より X=2/5\cdot x, R=4/5\cdot r^{2} とおくと、XR に関する楕円曲線のWeierstrass標準形

      X^{2}=R^{3}+(y^{2}+144)/20\cdot R^{2}-(23y^{2}+16)/5\cdot R+8/25\cdot (13y^{2}-8)  (5)   

が得られる。ここでsagemathにより

    y=1

    a_{1}=0;a_{3}=0

    a_{2}=(y^{2}+144)/20;a_{4}=(-23y^{2}-16)/5

       a_{6}=8/5^2(13y^{2}-8)

    E=EllipticCurve([ a_{1},a_{2},a_{3},a_{4},a_{6} ])

    E.gens()

とすると、有理点群の rank が 3 であることがわかった。

 y=2 としても rank が 3、3 とすると rank が 4 、4 とすると rank が 2,5 とすると rank が 4 であることがわかった。分数にすればどうかと思い、y=1/2 とするとrank が 4,2/3 とすると rank が 3 であった。

 試した範囲では、どんな y を代入しても、最低でも rank が 2 、ほとんどの場合rank が 3 か 4 になった。

 これは何かあるに違いない。3乗和の場合には有名なラマヌジャン恒等式があるので、この場合にも、xry多項式とする解があるかもしれないと期待した。

  ry の次数が等しいと考え、XR は以下の形と仮定した。

    X=Ay^{3}+By^{2}+Cy+D

    R=Ey^{2}+Fy+G

すると

 X^{2}-(R^{3}+(y^{2}+144)/5\cdot R^{2}-(23y^{2}+16)/5\cdot R+8/25\cdot (13y^{2}-8))=0

より、左辺は y の 6 次式となるが、その係数がすべて 0 となることから、A,B,C,D,E,F,G に関する以下の式が成立する。

    ① -E^{3}+A^{2}-1/20\cdot E^{2}=0

    ② -3E^{2}F+2AB-1/10\cdot EF=0 

    ③ -3EF^{2}-3E^{2}G+B^{2}+2AC-36/5\cdot E^{2} \\ \hspace{30pt}-1/20\cdot F^{2}-1/10\cdot EG+23/5\cdot E=0 

    ④ -F^{3}-6EFG+2BC+2AD-72/5\cdot EF-1/10\cdot FG \\ \hspace{30pt}+23/5\cdot F=0 

    ⑤ -3F^{2}G-3EG^{2}+C^{2}+2BD-36/5\cdot F^{2}-72/5\cdot EG \\ \hspace{30pt}-1/20\cdot G^{2}+16/5\cdot E+23/5\cdot G-104/25=0 

    ⑥ 2CD-72/5\cdot FG-3FG^{2}+16/5\cdot F=0 

    ⑦ -G^3+D^{2}-36/5\cdot G^{2}+16/5\cdot G+64/25=0

 一見すると解けそうもないが、①より、

 A^{2}=E^{2}(E+1/20)

 E=0 とすると、A=0 ③式より B^{2}=1/20\cdot F^{2} これを満たす有理数は B=0,F=0 のみ。

 すると、⑥より CD=0 C=0 とすると⑤式より

   -1/20\cdot G^{2}+23/5\cdot G-104/25=0 これを満たす有理数はない。

 したがって、D=0 すると、⑦より 

   -G^{3}-36/5\cdot G^{2}+16/5\cdot G+64/25=0 これを満たす有理数G=4/5 のみ。このとき ⑤より 

   C^{2}-1/20\cdot G^{2}+23/5\cdot G-104/25=C^{2}-64/125=0 これを満たす有理数はない。よって、 E \ne 0

 よって (A/E)^{2}=E+1/20 としてよい。 ここで t=A/E とおくと A=Et,  E=t^{2}-1/20

 また、⑦式を書き直すと

   D^{2} = G^{3}+36/5\cdot G^{2}-16/5\cdot G-64/25 

と、楕円曲線であることがわかり、SageMathにより有理点を求めると、

   (G,D)=(4/5,0), (4,-64/5),(4,64/5) 

の3点であることがわかる。以下、この3つに場合分けする。

  • G=4/5, D=0 の場合

 ②~⑥は以下のとおりとなる。

    ②' -3t^{4}F+2t^{3}B+1/5\cdot t^{2}F-1/10tB-1/400\cdot F=0

    ③' -48/5\cdot t^{4}+2t^{3}C-3t^{2}F^{2}+137/25\cdot t^{2} \\ \hspace{30pt} +B^{2}-1/10tC+1/10\cdot F^{2}-1/4=0

    ④' - 96/5\cdot t^{2}F-F^{3}+2BC+137/25\cdot F=0

    ⑤' - 256/25\cdot t^{2}+C^{2}-48/5\cdot F^{2}=0

    ⑥’ - 256/25\cdot F=0

 ⑥'より F=0  したがって、④'より BC=0 である。

 

   C=0 とすると ⑤’よりt=0 すると ③'より B =\pm1/2

 よって、A=0, B=±1/2, C=0, D=0, E=-1/20, F=0, G=4/5 は解。このとき

    X=Ay^{3}+By^{2}+Cy+D=\pm 1/2\cdot y^{2}

    R=Ey^{2}+Fy+G=-1/20\cdot y^{2}+4/5

   X=2/5\cdot x, R=4/5\cdot r^{2} であるので、

 x=\pm 5/4\cdot y^{2}, r^{2}=1-y^{2}/16    これは 解(3)と同一である。

 

 B=0 とすると F=0 であるので、⑤'より C=\pm16/5\cdot t これを③'に代入して

    C=16/5\cdot t のとき

      (-1/100)  (4t - 5)  (4t + 5)  (20t^{2} - 1)=0

    C=-16/5\cdot t のとき

      (-1/20)  (16t^{2}-5) (20t^{2}-1)=0

 したがって、 C=16/5\cdot t のとき t=\pm 5/4 すなわち、E=121/80,A=\pm 121/64

  よって、A=\pm 121/64, B=0, C=\pm 4, D=0, E=121/80,F=0,G=4/5 は解。つまり、

 X=Ay^{3}+By^{2}+Cy+D=\pm 121/64\cdot y^{3} \pm 4y

 R=Ey^{2}+Fy+G=121/80\cdot y^{2}+4/5

    X=2/5\cdot x, R=4/5\cdot r^{2} であるので、

    x=\pm 605/128\cdot y^{3} \pm 10y, r^{2}=1+121/64\cdot y^{2}  

この解は(4)と同一である。

 

 G=4, D=64/5 の場合と G=4, D=-64/5 の場合にも同様の手法で解を求めていくが新しい解は得られなかったので省略する。

 

 そこで以下の形の解も探してみたが、有理数解を求められそうもない超楕円曲線が出てきたりするだけでめざす解は見つからなかった。

    X=Az^{3}+Bz^{2}+Cz+D

    y^{2}=Ez^{2}+Fz+G

    R=Hz^{2}+Iz+J

 

4.まとめ

 結局、(3)、(4)の解以外は見つからなかった。ではなぜピタゴラス数ではない r の解がたくさん出てくるのだろう。

 考えてみれば当たり前のことであるが、有理数 r を具体的に与えて、

 x^{2}-my^{2}=-a が一つでも有理数解を持てば、それが有理点を無数に有する \mathbb {Q} 上で定義された代数曲面上の有理曲線である。

 最初に解(2)を見つけたので、解は x,yr の関数としてあるはずと思い込んでしまったのが誤りであった。

 

 まとめると、有理数体上で定義された次の代数曲面 

    x^{2}-my^{2}=-a                                

    ここで m=26-23r^{2}+1/5\cdot r^{4}

                   a=16(1-r^{2})(1+2r^{2}+1/5\cdot r^{4})

において、有理点を無限個含む有理曲線として下表に示すものがある。これ以外のものがあるかどうかについては不明である。

 

\begin{array}{l|l} x=\pm 20(1-r^{2}) & r:3/5, 4/5,5/13,etc \\ y=\pm 4\sqrt{(1-r^{2})} & \\ \hline x=\pm 20/11\cdot (r^{2}+3) \sqrt{(r^{2}-1)} & r:5/3,5/4,13/5,etc \\ y=\pm 8/11\cdot \sqrt{(r^{2}-1)} & \\ \hline x^{2}-my^{2}=-a & r:fix \\ & if \ this \ equation \ has \ a \ solution \end{array}

 

 

 

 

メモ32 x^5+y^5=z^5+w^5 の虚2次体の整数解について  - 第25回日曜数学会での発表の補足 -

 2022年10月15日の第25回日曜数学会で、x^{5}+y^{5}=z^{5}+w^{5} の実2次体での整数解を求める発表を行いました。その際、なぜ実2次体なのかという質問をうけ、虚2次体であれば簡単に例が求まるので実2次体とした旨の回答をしました。ここでは、その虚2次体の例を記しておきます。

 

 a^{5}+b^{5}=(c+x)^{5}+(c-x)^{5}        (1)

 

とすると

 

 a=c+x かつ b=c-x                   (2)

 

または

 

 a=c-x かつ b=c+x                   (3)

 

は(1)の解である。

 

 (2)を解くと c=(a+b)/2, x=(a-b)/2

 (3)を解くと c=(a+b)/2, x=(-a+b)/2

 

である。

 したがって、c=(a+b)/2 とおき、(1) を x に関する方程式とみて、左辺-右辺を整理すると

 

 F=a^{5}+b^{5}-(c+x)^{5}-(c-x)^{5} \\ \hspace{10pt}=  -5/16 \cdot (a+b)(2x+a-b)(2x-a+b)(4x^{2}+3a^{2}+2ab+3b^{2})

 

 したがって、c=(a+b)/2 かつ x として 4x^{2}+3a^{2}+2ab+3b^{2}=0 を満たす x をとれば(1)の解である。

 4x^{2}+3a^{2}+2ab+3b^{2}=0 を解くと

 

 x=\pm \sqrt{-(3a^2+2ab+3b^2)}/2

 

a,b が実数であれば、根号の中は負であるので x虚数となる。

よって、

 

 a^{5}+b^{5}=\{ (a+b)/2+\sqrt{-(3a^{2}+2ab+3b^{2})}/2 \}^5 \\ \hspace{40pt}+\{ (a+b)/2-\sqrt{-(3a^{2}+2ab+3b^{2})}/2 \}^{5}  

 

となり、虚2次体整数で5乗和を2通りに表わす例が得られた。

 例えば a=b=1 とすると x=\pm \sqrt{2}i であるので

 

  1^{5}+1^{5}=(1+\sqrt{2}i)^{5}+(1-\sqrt{2}i)^{5}

 

である。

x^5+y^5=z^5+w^5 の解を求めて - 第25回日曜数学会発表資料 -

 第25回日曜数学会(2022.10.15)で発表する(した)資料です。ご関心のある方はご覧いただけると嬉しいです。

 

 

メモ31 有限体上の楕円曲線に関する練習問題(その3)

1.はじめに

 Silverman Tate のRational Points on Elliptic Curves(以下,[Sil]と記す)の第4章の練習問題を(未解答を含め)解いてみた結果を記したメモの(その3)です。その2で問題4.8と4.10に言及したので今回はその解答の試みをメモしました。

2. 問題

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【問題4.8】

p \equiv 3 \pmod 4素数b \in \mathbb{F}_{p}^{*} とする。このとき、以下を示せ。
(a) v^{2}=u^{4}-4b(p-1) 個の解 (u,v) \ u,v \in \mathbb{F}_{p} を有する。
(b) (u,v) が(a)の解であれば、
   \hspace{10pt}\phi (u,v)=(\frac{1}{2}(u^{2}+v),\frac{1}{2}u(u^{2}+v))楕円曲線 \hspace{10pt}C:y^{2}=x^{3}+bx の点である。
(c) (b)で定義される曲線 C について \# C( \mathbb{F}_{p})=p+1 である。

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解答の流れ

(a) 4b=u^{4}-v^{2}=(u^{2}-v)(u^{2}+v) より
a=u^{2}-v, \  a’=u^{2}+v とおくと、aa'=4b, \  b \in \mathbb{F}_{p}^{*} なので a,a' \in \mathbb{F}_{p}^{*} であり、a'=4b/a となる。 
 また、u^{2}=(a+a’)/2, \ v=(a’-a)/2 なので、a \in \mathbb{F}_{p}^{*} を与えれば(a)の解が2個あるか、1個もないことになる。 
 a, \ A が同じ u^{2} を定めるのは、
u^{2}=(a+a’)/2=(A+A’)/2 とすると a+4b/a=A+4b/A より、 a-A+4b(A-a)/(aA)=0 である。a≠A とすれば aA=4b  つまり、同じ u^{2} を与えるのは a,a' のみである。
 aF_{p}^{*} を動くとき、a’F_{p}^{*} を動く。u=0 とならなければ、a を与える解 (u,v) が2つ定まるが、a' も同じ u^{2} を与えるので解の個数は p-1 となる。u=0 となるのは a=-a’ のときである。つまり a^{2}=-4b のときである。この解の個数は0か2である。0のときは、すでに与えられた方程式の解の個数が p-1 個であることを示した。解が2個のときは、解でない (p-3) 個の a については、それぞれ2個解があるが、aa' でダブルカウントするので結局解の個数は (p-3) である。a=-a’ のときは u=0で解は一つであるが、a≠a' なので、a,a’ について解が一つづつ、計 p-1 個の解がある。

(b) x=1/2(u^{2}+v), \ y=1/2u(u^{2}+v), \  v^{2}=u^{4}-4b として (x^{3}+bx) の式の値を計算すると
\hspace{10pt}x^{3}+bx=\{1/2(u^{2}+v)\}^{3}+b \cdot 1/2(u^{2}+v)  \\ =1/8(u^{2}+v) \{(u^{2}+v)^{2}+4b \}=1/8(u^{2}+v) \{u^{4}+2u^{2} \cdot v+v^{2}+4b \} \\=1/8(u^{2}+v) \{u^{4}+2u^{2} \cdot v+u^{4} \}=1/4u^{2}(u^{2}+v) \{u^{2}+v \} \\= \{u(u^{2}+v) \}^{2}=y^{2} であるので(b)がいえた。

(c) v^{2}=u^4-4b であるので (u^{2}+v)(u^{2}-v)=4b したがって、u^{2}+v≠0 である。
 (x,y)= \phi (u,v)=\phi (u’,v’) とすると x≠0 であり、u=y/x, \ v=2x-u^{2} となる。したがって、\phi単射である。x=0 の解は (0,0) のみであるので、原点である無限遠点を加え \#C(F_{p})=p+1 である。

 

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【問題4.10】

p \equiv 2 \pmod 3素数c \in F_{p}^{*} とする。このとき、以下を示せ。

曲線 C:y^{2}=x^{3}+c について \#C(F_{p})=p+1

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解答の流れ

 F_{p}^{*} は乗法に関し位数 p-1巡回群をなし、3∤(p-1) なので、x≠0 のとき、x→x^{3}F_{p}^{*}→F_{p}^{*} の同型写像。したがって、xF_{p}^{*} を動くとき x^{3}F_{p}^{*} 全体を動く。また、x^{3}+cF_{p} から F_{p} への全単射F_{p} の元の個数は p 個であるが、その内訳は、0と p に関する平方剰余が (p-1)/2 個、平方非剰余が (p-1)/2 個であり、x^{3}+c が平方剰余のときに解が2個、平方非剰余のとき解は0個である。

 したがって、x^{3}+c≠0 の場合の CF_{p} 点は p-1 個である。 x^{3}+c=0 となる場合は解が一つ。これに原点を加え \#C(F_{p})=p+1 である。

メモ30 有限体上の楕円曲線に関する練習問題(その2)

1.はじめに

 Silverman Tate のRational Points on Elliptic Curves(以下,[Sil]と記す)の第4章の練習問題を(未解答を含め)解いてみた結果を記したメモの(その2)です。解答におかしなところがあれば、是非ご連絡下されば嬉しいです。また、なんとも、ごちゃごちゃした解答なのですっきりした解答をご教示いただければ幸いです。

(以下青字部分追記:2022-8-8、修正:8-12)

 有限体上の楕円曲線の有理点の章の問題なのに、その結果を使わないのも変だと思っていましたが、法pでの還元定理を使えば比較的容易に解決することがわかりました。

 そのヒントは問題4.8と問題4.10にありました。前者は問題4.9、後者は問題4.11のヒントになります。ここでは後者を使った問題4.11の解答の流れを簡単に示します。

 問題4.10の主張は以下のとおりです。

 

問題4.10

p \equiv 2 \mod 3素数 c \mathbb {F}_{p}^{*} の元とする。このとき、曲線 C \ : \ y^{2}=x^{3}+c に対し \#C( \mathbb{F}_{p})=p+1

 

  この結果を用いると、問題4.11において、C の判別式の 2 倍を割らない素数 q \equiv 2 \mod3 について\# \tilde {C}( \mathbb{F}_{q})=q+1 となります。法p還元定理を用いると

 \Phi \rightarrow \tilde{C}(\mathbb{F}_{q})単射準同型となるので \#\Phiq+1 の約数となります。今、ディリクレの算術級数定理により、このような素数 q_{1} をとります。q_{1}=3k_{1}+2 とすると、k_{1}は奇数となるので、2k_{1}+1 と置き直します。すると、q_{1}=6k_{1}+5 となります。次に、k_{1}+15 は素であるとします。すると、算術級数定理により  q_{2} = 6(k_{1}+1)k_{2}+5 の形の素数がとれます。q_{1}, \ q_{2}1 を足すと、 q_{1}+1=6(k_{1}+1), \ q_{2}+1=6 \{(k_{1}+1)k_{2}+1 \} となります。 \#\Phi6(k_{1}+1) 6 \{(k_{1}+1)k_{2}+1 \} の最大公約数 6 の約数になります。

 k_{1}+15 が素でない場合、k_{1}+15 を素因数として含みます。それ以外の k_{1}+1 の素因数の積を l とおきます。このとき、k_{1}+1 と 6l+5 は互いに素となります。よって、算術級数定理により q_{2}=6(k_{1}+1)k_{2}+6l+5 の形の素数がとれます。q_{1}, \ q_{2}1 を足すと、 q_{1}+1=6(k_{1}+1), \ q_{2}+1=6 \{(k_{1}+1)k_{2}+l+1 \} となります。このとき、k_{1}+15 以外の素因数と (k_{1}+1)k_{2}+l+1 は互いに素となります。 (k_{1}+1)k_{2}+l+15 で割り切れるとすると、 l \equiv -1 \pmod 5 となります。したがって、k_{1}+15 以外の素因数の中に mod \ 51 と合同でない素数 p が存在します。lp を改めて l とおき、上の議論を繰り返せば、 k_{1}+1(k_{1}+1)k_{2}+l+1 は互いに素であることがわかります。したがって、6(k_{1}+1) 6 \{(k_{1}+1)k_{2}+l+1 \} の最大公約数 は 6 となることがわかります。 

 これで問題4.11の (a) がいえたことになります。後は、位数2の元と位数3の元を具体的に定めることで解答が得られます。

  

2.問題

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【問題4.9】

b を 4乗素因数のない0でない整数とする(つまり、p^{4}|b となる素因数p が存在しないこと)。また、C を以下で定義される楕円曲線とする。

\hspace{10pt}C:y^{2}=x^{3}+bx

さらに、\Phi \subseteq C(\mathbb{Q}) を有限位数の有理点からなる群とする。このとき、以下を示せ。
(a)\hspace{5pt} \#\Phi は4を割る。
(b)\hspace{5pt} より正確には、 \#\Phi は以下で与えられる。

\begin{eqnarray}
\Phi
 \cong
  \begin{cases}
   \mathbb{Z} / 4\mathbb{Z} & ( b=4 ) \\
   \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} \oplus  \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} & ( -b= square ) \\ \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} & (otherwise)
  \end{cases}
\end{eqnarray}

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解答の流れ

(a),(b) をまとめて解答する。

(a) をいうには、\Phi には奇数位数の元及び4より大きい2のべき乗位数の元が存在せず、位数4の元は最大1つ、位数2の元は最大3つしか存在しないことをいえばよい。

① \Phi に奇数位数の元及び4より大きい2のべき乗位数の元が存在しないこと

 そのような元 P が存在すると仮定する。P が奇数位数とすると、自然数kが存在して、(2k+1)P=0
 よって、P=2(-kP) である。 また、P4 より大きい 2 のべき乗位数の元とすると、P を何倍かすると位数 8 の元 Q となる。このとき、R=2Q は位数 4 の元であり、その y 座標は 0 ではない。
 したがって、①をいうには、有理点 P=(x,y),Q=(X,Y) (Py 座標は 0 でない )2Q=P となるペアは存在しないことをいえばよい。
 今、有理点 P=(x,y)\hspace{5pt}(y\neq 0),Q=(X,Y) について 2Q=P とする。(*)
楕円曲線の点の 2 倍の公式から
   \hspace{10pt}x=(X^{4}-2bX^{2}+b^{2})/(4Y^{2})=\{(X^{2}-b)/(2Y)\}^{2}
C の判別式は -4b^{3} であるので、Nagell-Lutzの定理より Y \neq 0 とすると Y \mid (-4b^{3}) である。したがって、Y2 以外の素因数 p を含むとすると p \mid b である。
\hspace{5pt}Y^{2}=X^{3}+bX より p \mid X である。
 Y が奇数とすると、Y^{2}=X^{3}+bX より X は奇数で、 b は偶数。また、x は整数であることから 2YX^{2}-b を割るので b は奇数。これは、矛盾。
 Y が偶数とする。X を奇数とすると Y^{2}=X(X^{2}+b) は4の倍数なので 4 \mid (X^{2}+b) よって b≡3(mod4) 一方、X^{2}-b2Y の倍数であるので、4の倍数でもある。よって、b≡1(mod4) これは矛盾。よって Y2 のべき乗である。
 Y^{2}=X(X^{2}+b) より X=2^{f}, b=2^{e}-2^{2f} 、または、X=-2^{f}, b=2^{e}-2^{2f} である。また、Y=\pm 2^{(e+f)/2} である。

 (X^{2}-b)/(2Y) は整数であり、X^{2}-b=2^{2f+1}-2^{e} なので、

 2f+1 \geq e ならば e-\{1+(e+f)/2\}=(e-f)/2-1 \geq 0  ①

 2f+1 \leq e ならば 2f+1-\{1+(e+f)/2\}=(3f-e)/2 \geq 0 ②

 ①より、f+2 \leq e \leq 2f+1 よって、f \geq 1 また、bの素因子2の指数は3以下なので、e+f \geq 8  となることはない。したがって、(e,f)=(3,1),(4,2),(5,2) のみ可能。(e,f)=(3,1) のとき、b=4,X=2 より x=0 、さらに y=0 これは矛盾。(e,f)=(4,2),(5,2) のときは、Y が2のべき乗とならないためありえない。 

 ②より、2f+1 \lt e \leq 3f よって f \gt 1 このとき  e \gt 3 である。bは4乗因子を含まないのでこのケースもない。

 

② 位数 4 の元は最大1つしか存在しないこと

 P=(x,y) を位数 4 の元とすると、y(2P)=0 である。y(2p)^{2}=x(2P)^{3}+bx(2P) なので

x(2P)=0 または x(2P)^{2}+b=0 である。

 x(2P)=0 のとき、x(2P)=\{(x^{2}-b)/(2y)\}^{2} より x^{2}=b である。よって、y^{2}=x^{3}+bx=2x^{3} である。x,y とも整数であるので、x=2, y=±4,b=4 である。P=(2,4) とすると、2P =(0,0), 3P=(2,-4) である。

 x(2P)^{2}+b=0 のとき、x(2P)=\{(x^{2}-b)/(2y)\}^{2} より、b=-\{(x^{2}-b)/(2y)\}^{4} つまり、b の素因数の指数はすべて 4 以上である。したがって、b 及び (x^{2}-b)/(2y)2 を素因数として含まない。よって、x は奇数である。y^{2}=x(x^{2}+b) であるので y^{2},x^{2}+b は偶数、しかも 4 で割れる。したがって、b≡3(mod 4) である。一方、(x^{2}-b)/(2y)2 を素因数として含まず、y2 で割れるので、x^2-b≡0(mode 4) これは矛盾。したがって、位数 4 の元が存在するのは、b=4 のときのみである。 

 

③ 位数 2 の元は最大3つしか存在しないことをいう。

 位数 2 の有理点の y 座標は 0 したがって、x(x^{2}+b)=0 よって、x=0 または、x^{2}=-bである。

 したがって、位数 2 の有理点は、x=0 及び -b が平方数のとき (\sqrt{-b},0),(-\sqrt{-b},0) である。

 

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【問題4.11】

c を 6乗素因数のない0でない整数とする(つまり、p^{6}|b となる素因数p が存在しないこと)。また、C を以下で定義される楕円曲線とする。

\hspace{10pt}C:y^{2}=x^{3}+c

さらに、\Phi \subseteq C(\mathbb{Q}) を有限位数の有理点からなる群とする。このとき、以下を示せ。
(a)\hspace{5pt} \#\Phi は6を割る。
(b)\hspace{5pt} より正確には、 \#\Phi は以下で与えられる。

\begin{eqnarray}
\Phi
 \cong
  \begin{cases}
   \mathbb{Z} / 6\mathbb{Z} & ( c=1) \\
   \mathbb{Z} / 3\mathbb{Z} & ( c \neq 1 \  is \ \ square \ or \ c = -432)\\ \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} & (c \neq 1 \ is \ cube) \\ 0 & (otherwise)
  \end{cases}
\end{eqnarray}

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解答の流れ

(a),(b) をまとめて解答する。

以下の順序で解答する。

p \neq 2素数とする。Q=(x,y)C の奇数位数の有理点で p|c とする。このとき、p∤x ならば p∤y, \ p∤x(2Q), \ p∤y(2Q)。また、p|x ならば   p|y, \ p|x(2Q), \ p|y(2Q)。ここで x(2Q), \ y(2Q) は、有理点 2Qx 座標、y 座標である。

p \neq 2素数とする。Q=(x,y)C の奇数位数の有理点とするとき、Q2Qx 座標、y 座標を素因数分解したときの p の指数は同一である。

③ 奇数位数の原点でない有理点があるとするとc は平方、もしくは-432 であり、その有理点の位数は3である。

④ 位数3の点は存在してもせいぜい二つ。

⑤ 位数2の元が存在するのは、c が立方数のときに限りただ一つ存在する。また、位数4の点は存在しない。

c \neq 1 が立方数のとき \Phi \cong \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} である。また、 c=1 のとき \Phi \cong \mathbb{Z} / 6\mathbb{Z}

 

①の解答の流れ

 y^{2}=x^{3}+c より、p∤x ならば p|c であるので p∤y である。x(2Q)=\frac {x(x^{3}-8c)}{4y^{2}} は整数、p∤x, \ p∤(x^{3}-8c), \ p∤y^{2} なので p∤x(2Q) である。y(2Q)^{2}=x(2Q)^{3}+c より p∤y(2Q) である。

 p|x ならば   p|y はよい。 p∤x(2Q) ならば  p∤y(2Q)。したがって、すぐ上で示したことより  i \gt 0 のとき  p∤x(2^{i}Q), \ p∤y(2^{i}Q) である。 Q の位数を k とすると、フェルマーの定理より 2^{φ(k)}≡1 \ (mod \ k) ここで \varphi (k)k と素な k 以下の自然数の数である。よって、x(2^{φ(k)}Q)=xpで割れないことになるが、これは矛盾。したがって、p|x(2Q)  (解答終)

②の解答の流れ

 p \neq 2, \ 3素数とする。p^{3}|y とする。C の判別式 D=-27c^{2}  なので、Nagell-Lutzの定理より p|c したがって、p|x である。p^{2}|x とすると c=y^{2}-x^{3} より cp^{6} で割り切れることになり矛盾。したがって、x の素因数 p の指数はちょうど1である。x(2Q) は整数であるので、このとき、 (x^{3}-8c)p^{5} で割り切れる。x^{3}+cp^{6} で割り切れるので cp^{5} で割り切れる。x^{3}=y^{2}-cp^{5}で割り切れることになり、p^{2}|x となり矛盾。したがって、y はせいぜい p^{2} で割り切れるだけである。 
 整数 y について e_{p}(y)y素因数分解したときの素因数 p の指数とする。 今、e_{p}(y)=2 とする。Nagell-Lutzの定理により p|c である。i \gt 1 のとき p^{i}|x とすると、e_{p}(c)=4 したがって、e_{p}(x(2Q))=e_{p}(x) このとき、y(2Q)^{2}=x(2Q)^{3}+c より e_{p}(y(2Q))=e_{p}(y) である。e_{p}(x)=1 のとき e_{p}(c)=3 である。p^{2}|x(2Q) とすると p^{5}|(x^{3}-8c) であり、p^{4}|(x^{3}+c) より p^{4}|c となり矛盾。したがって、e_{p}(x(2Q))=1 であり、e_{p}(y(2Q))=1 である。つまり、 e_{p}(y)=2 のとき、②は成り立つ。e_{p}(y)=1とする。Nagell-Lutzの定理により p|c である。また、x^{3}=y^{2}-c より p|x である。よって、e_{p}(c)=2 である。したがって、2倍の公式を考えて、e_{p}(x)=e_{p}(x(2Q)) であり、 これより、e_{p}(y(2Q))=1 である。よって、  e_{p}(y)=1 のときでも、②は成り立つ。

 また、p|y(2Q) であれば、Nagell-Lutzの定理により p|c である。①より p∤xとすると p∤y(2Q) であり、矛盾。したがって、p2Qx 座標、y 座標の素因子であれば必ず Q の素因子である。

 つぎに p=3 とする。3^{3}|y とする。Nagell- Lutzの定理より y^{2}|D=-27c^{2}  よって 3|c したがって 3|x である。3^{2}|x とすると c=y^{2}-x^{3} より p^{6}|c となり矛盾。 e_{3}(x)=1 とすると e_{3}(c)=3 である。①より 3|x(2Q) したがって、3^{6}|(x^{3}-8c) また、3^{6}|(x^{3}+c) であるので、 3^{6}|9c したがって、3^{4}|c   これは矛盾。したがって、y はせいぜい 3^{2} で割れる。    
 3^{2}|y のとき、Nagell-Lutzの定理より 3|c よって、3|x さらに 3^{3}|c である。 i \gt 1 のとき e_{3}(x)=i とすると、e_{3}(c)=4 である。よって、e_{3}(x(2Q))=i である。3^{2}∤x とする。このとき e_{3}(c)=3 である。①より、3|x(2Q) である。y(2Q)^{2}=x(2Q)^{3}+c より、3^{2}|y(2Q) である。3^{2}|x(2Q) とすると 3^{4}|c となり矛盾。よって3^{2}∤x(2Q)
 3^{2}∤y のとき i \gt 0 に対し e_{3}(x)=i とすると e_{3}(c)=2 である。よって、e_{3}(x(2Q))=i かつ e_{3}(y(2Q))=1 となる。

 また、3∤y のとき 3|x であれば、3∤c であり、e_{3}(x(2Q)=e_{3}(x) となる。また、3∤y(2Q) である。3∤x であれば、3|c とすると 3∤x(2Q), \ y(2Q) である。また、3∤c とすると、x^{3}-8c \equiv \ x^{3}+c =y^{2} \ (mod \ 3)、よってx(2Q) \equiv x \ (mod \ 3) であり、 3∤x(2Q) また、y(2Q) \equiv y \ (mod \ 3) より 3∤y(2Q) である。以上より、p=3 の場合でも②がいえた。 (解答終) 

③の解答の流れ

 Q=(X,Y) を奇数位数の点とする。そうすると (2k-1)Q=0 より、2(kQ)=Q である。R=kQ=(x,y) とおけば 2R=Q なので 2 倍の公式より

\hspace{10pt}X=x(x^{3}-8c)/(4y^{2}) かつ、Y^{2}=X^{3}+c 
である。X は整数なので x を奇数とすると、x(x^{3}-8c) も奇数となり矛盾。よって、2|x である。
 c :奇数とすると y^{2}=x^{3}+c より y も奇数。このとき、X=x(x^{3}-8c)/(4y^{2})は4の倍数。また、[tex:Y \neq 0 で奇数である。
 Q'=2Q について同じことを繰り返せば、X'=X(X^{3}-8c)/(4Y^{2})8 の倍数、かつ Y’ \neq 0 は奇数。これを繰り返せば、Cの有限位数有理点のx座標で2の任意のべき乗の倍数となる点が存在することになる。これはどこかで X=0 または X^{3}=8c となることを意味する。
 X=0 となるのは  c が平方のときである。 (★)
 X^{3}=8c となるのは、c が立方数のときである。このとき、ある自然数 i について x(2^{i} Q)=8c, y(2^{(i+1)}Q)^2= c よって、c は、平方数でもある。c は6乗因子を有しないので c=1 である。
 c を偶数とすると、2|y かつ2^{2}|c となる。2^{2} ∤ x とすると、2^{2}|y のときは、X=x(x^{3}-8c)/(4y^{2}) の2の指数は-2以下となり矛盾。2^{2}∤y かつ 2^{2}∤x とすると X=x(x^{3}-8c)/(4y^{2}) は奇数。Yも奇数。したがって、Y \neq 0である。Q'=2Q について、x 座標の 2 の指数を考えると整数であることに矛盾が生じる。よって、2^{2}|x である。 
 ここで 2^{3}|y とすれば 2^{6}|c となり矛盾。したがって、y24 で割り切れるだけで,8 では割り切れない。 
 2^{2}∤y とすれば 2^{3}∤c であり、X8 の倍数、2^{2}∤Y となる。Y \neq 0 であれば Q'=2Q について同じことを行い、C の有限位数有理点で2の任意のべき乗の倍数となる点が存在することになる。よって上の議論と同様に、c は平方数か立方数の場合は c=1 となる。
 残りは、2^{2}|x かつ 2^{2}|y, 2^{3}∤y のケースである。このとき e_{2}(c)=4 である。e_{2}(x)=i とすると i \gt 1 である。このとき e_{2}(x(2Q))=e_{2}(x), \ e_{2}(y(2Q))=e_{2}(y(Q)) である。つまり、すべての素数について、Q2Qx 座標と y 座標の指数は同じである。これは、
x(Q)=x(2Q) または -x(2Q) を意味する。
 x(Q)=x(2Q) のとき(★★)、これを x とおくと
\hspace{10pt}x=x(x^{3}-8c)/(4y(Q)^{2})

よって、

\hspace{10pt}4x(x^{3}+c)=x(x^3-8c)
\hspace{10pt}x(3x^3+12c)=0

したがって、

\hspace{10pt}x=0 または x^{3}+4c=0
 x=0 であれば c は平方数である。
 x^{3}+4c=0 であれば、c=2 \cdot c' (c' :立方数) なので c=±2^{3k+1}d^{3l} ここで d は正奇数、k, \ l0 以上の整数である。c6 乗因子を持たないので k=0, \ 1, \ l=0, \ 1 である。また、y(Q)^{2}=x^{3}+c なので x^{3}+c=-3c は平方数。これを満たすのは c=-2^4 \cdot 3^3 のみである。
 x(Q)=-x(2Q) のとき、これを x とおくと
\hspace{10pt} x=-x(x^{3}-8c)/(4y(Q)^{2})

よって、

\hspace{10pt} -4x(x^{3}+c)=x(x^{3}-8c)
\hspace{10pt} x(5x^{3}-4c)=0

したがって、

x=0 または 5x^{3}-4c=0 である。 
 x=0 であれば 、c は平方数である。
 5x^{3}-4c=0 であれば、c=10 \cdot c' (c':立方数)   一方、x^{3}+c=9/5 \cdot c は平方数である。したがって、c=5 \cdot c’’ (c’’:平方数)。これらを満たす c は存在しない。

 以上より、奇数位数の零でない有理点 Q があるとすると c は平方数、もしくは-432 であることがわかった。(★)、(★★)より、ある自然数 i についてx(2^{i} Q)=0 を意味する。C の零でない有理点 Qx 座標が 0y 座標が 0 でないの場合、2Q=-Q となるので、3 \cdot 2^{i}Q=0 である。これは 3Q=0 を意味する。つまり奇数位数の元が存在すればその位数は3である。(0, \sqrt{c}) は位数 3 の例である。

④の解答の流れ(位数3の元はせいぜい2つしか存在しない)

 ③より、位数3の元 Q=(x,y) が存在するのは、c が平方数、もしくは-432 のときである。そのとき、2Q=-Q なので x(2Q)=x(Q) 、かつy(2Q)=-y(Q)を意味する。 よって x(Q)=x について \hspace{10pt}x(x^{3}-8c)/(4y(Q)^2)=x
\hspace{10pt}x(x^{3}-8c)=4x(x^{3}+c)

\hspace{10pt}x(3x^{3}+12c)=0 

 よって x=0 または c2c’\cdot c' (c':立方数)でなければならない。x=0 のとき Q=(0,\pm \sqrt{c}) の2つである。

 [tex:c=2c’ \cdot c'] のとき、c が平方数とすると、c6 乗因子を持たないので、c’は2以外の素因子を有しない。2についてもそのような場合はありえない。したがって、c は平方数ではありえない。c=-432 のとき、Q=(12,\pm 36) である。 (解答終)

⑤の解答の流れ 

 c が立方数の場合、Q=(-c^{-1/3},0) は位数2の元である。また、位数2の元は y 座標が 0 であるので 、c が立方数のときのみ唯一存在する。また、位数 4 の元が存在すれば  2R=Qとなる有理点 R=(X,Y) が存在する。c=d^{3} とすれば、X(X^{3}-8c)/(4Y^{2})=-d である。よって、

 X^{4}+4dX^{3}-8d^{3}X+4d^{4}=(X^{2}+2dX-2d^{2})=0 これを満たす有理数解はない。よって、位数 4 の元は存在しない。

⑥の解答の流れ

 ③④⑤よりc が立方数かつ平方数で 6 乗因子を有しない、すなわち c=1 の場合を除き、\Phi \cong \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} である。

  また、c=1 のとき \Phi \cong \mathbb{Z} / 6\mathbb{Z} である。

 以上で、解答を終わる。

 

 

 

 

 

 

メモ29 有限体上の楕円曲線に関する問題

1.はじめに

 Silverman Tate のRational Points on Elliptic Curves(以下,[Sil]と記す)の第4章は有限体上の楕円曲線を扱っている。章末の練習問題に取り組み始めたので、備忘録としてメモしておく。解答が不完全であったり、誤りがあったりする可能性はありますことご注意ください。誤りにお気づきの節はご連絡いただければ幸いです。

※7月17日に4.2【問題】の解答の流れを追加した。

2.問題

4.1【問題】
p \ne 2素数a,b,c,d∊F_{p},\hspace{5pt}acd \ne 0C を円錐曲線

C:ax^{2}+bxy+cy^{2}=dz^{2} とする。このとき、(a),(b)を示せ。

\hspace{10pt} (a)\hspace{5pt} b^{2} \ne 4ac ならば \#C(F_{p})=p+1
\hspace{10pt} (b)\hspace{5pt} b^{2}=4ac ならば \#C(F_{p})=1 または 2p+1 

また、これらの例をあげよ。

【解答の流れ】

(a) 

C:ax^{2}+bxy+cy^{2}=dz^{2} を変形して

a(x+\frac{b}{2a}y)^{2}+\frac{-b^{2}+4ac}{4a}y^{2}=dz^{2}

したがって、最初から b=0 としてよい。

 次の①、②の順に説明する。

 

① この円錐曲線上に有理点(x_{0},y_{0}) が存在するとして(a) を示す。

② この円錐曲線上に有理点(x_{0},y_{0}) が存在することを示す。

 

① 円錐曲線上に有理点(x_{0},y_{0}) が存在するとして(a) を示す。

 1)\hspace{5pt} z \ne 0 のとき:

 同次座標での解を求めるので z=1 とする。

  (x_{0},y_{0}) 以外の解は、円錐曲線と (x_{0},y_{0}) を通る直線との交点 (x,y) として得られる。

 直線の方程式 y=t(x-x_{0})+y_{0}を円錐曲線の式に代入すると

 

 ax^{2}+c \{ t(x-x_{0})+y_{0} \}^{2}-d=0

 ax^{2}+c \{t^{2}(x-x_{0})^{2}+2y_{0}t(x-x_{0})+y_{0}^{2}\}-d=0

 (a+ct^{2})x^{2}+(-2ct^{2}x_{0}+2y0tc)x+ct^{2}x_{0}^2-2cy_{0}x_{0}t+cy_{0}^2-d=0

 

 x,x_{0} がこの方程式の解なので、

 

 x+x_{0}=(2cx_{0}t^{2}-2cy_{0}t)/(a+ct^{2})
 x=(cx_{0}t^{2}-2cy_{0}t-ax_{0})/(a+ct^{2})
 y=y_{0}+t(x-x_{0}) \\ \hspace{7pt}=y_{0}+t(-2cy_{0}t-2ax_{0})/(a+ct^{2}) \\ \hspace{7pt}=(-cy_{0}t^{2}-2ax_{0}t+ay_{0})/(a+ct^{2})

 

 このように、解 x,yt の有理式として表される。

  -a/c が 平方剰余のとき:

 a+ct^{2}=0 の解となる2つの t 以外の t に対応する p-2 個の解、および (x_{0},y_{0}) の計 p-1 個の解がある。

  -a/c が 平方非剰余のとき:

 t に対応する p 個の解および (x_{0},y_{0}) の計 p+1 個の解がある。

 

 2)\hspace{5pt} z=0 のとき:

  -a/c が 平方剰余のとき:

 ax^{2}+cy^{2}=0 の解が2個ある。

  -a/c が 平方非剰余のとき:

 ax^{2}+cy^{2}=0 の解はない。

 

 以上の 1),2) より、①がいえた。

 

② この円錐曲線上に有理点(x_{0},y_{0}) が存在することを示す。

  -a/c が 平方剰余のとき:

 k \in F_{p} が存在し、  -a/c=k^2 よって、

 ax^{2}+cy^{2}=a(x^{2}-k^{2}y^{2})=a(x+ky)(x-ky)=d

 x=(d/a+1)/2,\hspace{5pt}y=(d/a-1)/2\cdot k とおけば

 x+ky=d/a,\hspace{5pt}x-ky=1 となり解があることがわかる。

 

  -a/c が 平方非剰余のとき:

 d/a または d/c が平方剰余であれば、y=0 または、x=0 とする解があることは容易にわかる。

 d/ad/c も平方非剰余とするとき、yF_{p} 全体を動くとき、-c/ay^{2}+d/a の値域を考える。
 F_{p} は0、平方剰余、平方非剰余の3種類の共通部分のない集合の和である。また、平方剰余の集合と非平方剰余の集合の元の数は等しい。
 yF_{p} を動くとき -c/ay^{2} は、y=0 であれば 0、平方剰余の集合は平方非剰余に、非平方剰余の集合は平方剰余に写される。これに d/a を足すと 0 は平方非剰余に、平方非剰余(もともとの平方剰余)のうちの一つは0になるので、平方剰余(もともとの平方非剰余)のうちの一つは平方剰余になることがわかる。これは、x^{2}=-b/ay^{2}+d/a が解を有することを意味する。

 

 以上で②がいえた。

 

(b)

  b^{2}=4ac ならば円錐曲線の式は a(x+b/(2a)y)^{2}=dz^{2}
 d/aが平方非剰余ならば、解は x+b/(2a)y=0,z=0 の一つのみ。
 平方剰余ならば、z=0 のとき x+b/(2a)y=0 の解が一つある。
         z=1 のとき d/a=k^2 とするとき x+b/(2a)y=±k を満たす解が2p個ある。よって、計2p+1 個の解がある。

 

例について

p=3 とする。

(a) の例: x^{2}+y^{2}=z^{2} の斉次座標での解は、 (0,1,1),(0,1,2),(1,0,1),(1,0,2) 

(b)d/a が平方非剰余の例:x^{2}+xy+y^{2}=2z^{2} の斉次座標での解は、(1,2,0) のみ

(b)d/a が平方剰余の例:x^{2}+xy+y^{2}=z^{2} の斉次座標での解は、(0,1,1),(0,1,2),(1,0,1),(1,0,2),(1,1,0),(1,2,1),(1,2,2) の7個

 

4.2【問題】
 素数p=3,7,11,13 について、有限体上の楕円曲線  C:y^{2}=x^{3}+x+1 の有理点群 C(\mathbb {F}_{p}) を求めよ。

【解答の流れ】

\mathbb {Z} 係数の多項式 f(x)=x^3+x+1 について

f(0)=1,f(1)=3,f(2)=11,f(3)=31,f(4)=69,f(5)=131,f(6)=223, \\ f(7)=351,f(8)=521,f(9)=739, f(10)=1011,f(11)=1343,f(12)=1741 である。

 次にf(x) の値を mod\hspace{5pt} p で平方剰余かどうか考えてC(\mathbb {F}_{p}) を求める。

p=3 のとき

 f(0)=1, f(1)=0,f(2)=2 であり、2\mathbb {F}_{3} で平方非剰余。したがって、集合として C(\mathbb{F}_{3})=\{\mathcal{O}, (0,±1), (1,0)\} である。 y=0 の点は1点のみなので、群として C(\mathbb{F}_{3}) \cong \mathbb{Z}/4\mathbb{Z}

p=5 のとき

 f(0)=1,f(1)=3,f(2)=1,f(3)=1,f(4)=4 であり、3\mathbb{F}_{5} で平方非剰余。したがって、したがって、集合として C(\mathbb{F}_{5})=\{\mathcal{O},(0,±1),(2,±1),(3,±1),(4,±2)\} である。有理点 Px 座標を x(P) とすると、x(2P)=\frac {x^{4}-2x^{2}-8x+1}{4y^{2}}  である。 P=(3,1) とすると x(2P)=(3^{4}-2\cdot3^{2}-8\cdot3+1)/(4\cdot1^{2})=0 よって、2P \neq -P これより、群として C(\mathbb{F}_{5}) \cong \mathbb{Z}/9\mathbb{Z}

p=7 のとき

 f(0)=1,f(1)=3, f(2)=4,f(3)=3, f(4)=6, f(5)=5, f(6)=6 であり、3,5,6 は平方非剰余。したがって、集合として

 C(\mathbb{F}_{7})=\{\mathcal{O},(0,±1),(2,±2)\} である。また、群として、 C(\mathbb{F}_{7}) \cong \mathbb{Z}/5\mathbb{Z}

p=11 のとき

 f(0)=1, f(1)=3, f(2)=0, f(3)=9, f(4)=3, f(5)=10, f(6)=3,\\ f(7)=10, f(8)=4, f(9)=2, f(10)=10 であり、10,2 は平方非剰余。 したがって、集合として

 C(\mathbb{F}_{11})=\{\mathcal{O},(0,±1),(1,±6), (2,0),(3,±3),(4,±6),(6,±6),(8,±2)\}

群として、C(\mathbb{F}_{11}) \cong \mathbb{Z}/14\mathbb{Z}

p=13 のとき

 f(0)=1, f(1)=3, f(2)=11, f(3)=5, f(4)=4, f(5)=1, f(6)=2,\\ f(7)=0, f(8)=1, f(9)=11, f(10)=10, f(11)=4, f(12)=12 であり、 11,5,2 は平方非剰余。したがって、集合として、

C(\mathbb{F}_{13})=\{\mathcal{O},(0,±1),(1,±4),(4,±2),(5,±1),(7,0),(8,±1),(10,±6),(11,±2),(12,±5)\} である。P=(1,4) とすると x(2P)=(1^{4}-2\cdot1^{2}-8\cdot1+1)/(4\cdot4^{2})=8 である。また、点 (4,2),(5,1),(8,1),(10,6),(11,2),(12,5)2 倍の x 座標は、それぞれ 8,4,11,10,4,11 である。したがって、位数が3 の元は (10,±6)しかない。よって、C(\mathbb{F}_{13}) \cong \mathbb{Z}/18\mathbb{Z} である。