ES 地面の目印

以前の数学メモは、地面の目印 -エスワン- にあります。

メモ32 x^5+y^5=z^5+w^5 の虚2次体の整数解について  - 第25回日曜数学会での発表の補足 -

 2022年10月15日の第25回日曜数学会で、x^{5}+y^{5}=z^{5}+w^{5} の実2次体での整数解を求める発表を行いました。その際、なぜ実2次体なのかという質問をうけ、虚2次体であれば簡単に例が求まるので実2次体とした旨の回答をしました。ここでは、その虚2次体の例を記しておきます。

 

 a^{5}+b^{5}=(c+x)^{5}+(c-x)^{5}        (1)

 

とすると

 

 a=c+x かつ b=c-x                   (2)

 

または

 

 a=c-x かつ b=c+x                   (3)

 

は(1)の解である。

 

 (2)を解くと c=(a+b)/2, x=(a-b)/2

 (3)を解くと c=(a+b)/2, x=(-a+b)/2

 

である。

 したがって、c=(a+b)/2 とおき、(1) を x に関する方程式とみて、左辺-右辺を整理すると

 

 F=a^{5}+b^{5}-(c+x)^{5}-(c-x)^{5} \\ \hspace{10pt}=  -5/16 \cdot (a+b)(2x+a-b)(2x-a+b)(4x^{2}+3a^{2}+2ab+3b^{2})

 

 したがって、c=(a+b)/2 かつ x として 4x^{2}+3a^{2}+2ab+3b^{2}=0 を満たす x をとれば(1)の解である。

 4x^{2}+3a^{2}+2ab+3b^{2}=0 を解くと

 

 x=\pm \sqrt{-(3a^2+2ab+3b^2)}/2

 

a,b が実数であれば、根号の中は負であるので x虚数となる。

よって、

 

 a^{5}+b^{5}=\{ (a+b)/2+\sqrt{-(3a^{2}+2ab+3b^{2})}/2 \}^5 \\ \hspace{40pt}+\{ (a+b)/2-\sqrt{-(3a^{2}+2ab+3b^{2})}/2 \}^{5}  

 

となり、虚2次体整数で5乗和を2通りに表わす例が得られた。

 例えば a=b=1 とすると x=\pm \sqrt{2}i であるので

 

  1^{5}+1^{5}=(1+\sqrt{2}i)^{5}+(1-\sqrt{2}i)^{5}

 

である。