メモ15の続きである。
3. のパラメータ表示
➀ となる行列の活用 (失敗)
なので、 , として、 となる2行2列の行列に対し、
, , とおくとき、
となるを見つかれば、左辺がをで変換したときに不変であり、 は それぞれ になることに注意すれば、メモ15の命題1より、
となる。ここで、 は の2次形式 をそれぞれ で変換した2次形式である。
として で試してみたが、複雑になりうまくいかなかった。
② の係数を巡回的にする (失敗)
立方数の和を2とおりであらわすケースは、 の多項式の対称性を利用して、パラメータ解を求めた(メモ15)。これを参考に、 の同次2次式である の係数を巡回的にした解がないか試みた。すなわち、
で、を求めようというものである。
例えば、 とするとき、
は成り立つが、 以外の の因子で、この等式はなり立たず断念。
③ 立方数を2とおりであらわす特殊な場合として3とおりを考える (ぼちぼち)
立方数を2通りに表すパラメータ解についてはメモ15に書いたやり方で求められる。再掲すると、
とおき、 を割り切る に対し となるよう を求めればよい。そうすると、
となる。 を の対称式とすれば も を割り切るので
とおくと、 であり、
となる。これまで としてきたが、 を有理数として とするとき、 が成り立つためには、
を解けばよい。(1), (5) の解 は、立方数を2とおりに表す例から求める。次に(2), (4) を の連立一次方程式とみて解く。そうすると、 はの有理数倍として表わされる。次に、これらの値を(3)に代入すると 有理数 という式が得られる。bが有理数として求まれば、そのまま, を用いてパラメータ解が得られる。 が の場合は、 を で置き換えれば が有理数係数の の同次二次式となる。
このような準備をしたうえで、 となるケースを求める。そうすると、楕円曲線の有理点の問題に帰着する場合(a.)となぜか の有理数係数同次二次式となる場合(b.)が出てきた。以下、その説明をする。
a. パラメータ解ではないが、楕円曲線の有理点から自然数での3とおりの立方数の和を幾つもみつける
上の説明で が有理数でない場合も考慮し、
とおく、このとき、 が成り立つためには、
より
でなければならない。
(7)と(9)より である。(6)、(10)より である。また、もともと であることに注意しておく。
以上より、3とおりに立方数の和で表される自然数 を持ってくれば、 がさだまるので、(7)、(8) より矛盾なく が定まれば、立方数を3とおりに表すパラメータ解が見つかることになる。
(7) ,(8)を両方満たす解は見つかりそうもないと思ったので、 の右辺を の式とし、この式を満たす 有理数 を求めれば、それに対応して立方数の和を3とおりに表せる組が見つかることに注意し、その方向を試みた。
この式は、
となる。この両辺をで割り、 とおけば、 が の4次式となる。ここで、3とおりに立方数の和で表せる組を持ってくれば、4次式の定数項と4次の項が平方になるので、この は有理数体上の楕円曲線となり、Weierstrass標準形に変換し、さまざまなツールを用いて有理点を求めることができる。以下に例をあげる
例:
2つの立方数の和を自然数で3とおりに表せる最小の数である 87,539,319 を取り上げる。
であり、それぞれ立方数もととなるの自然数の和が に等しいことから、 とする。このとき、
であるので、 である。また、
に注意すると、 である。
(2)、(4)より
より
これらを(3)に代入し、
より
ここで とすれば、
得る。以上より、(11)は が有理数なので、であることに注意すれば、
を得る。両辺を で割り、 とおけば
となる。これを
の方法でWeierstrass標準形に直し、CoCalcにより生成元を求めると
生成元
が得られた。これらをもとの に関する式に戻し、 を求めると
が得られた。これより、それぞれ以下の2つの立方数の和の3とおりの表現が得られた。なお、公約数により除して、 立方数の元となる数の公約数は1となるようにした。
また、以下の24の有理点について同様のことを行い、16の2つの正の立方数の和で3とおりにあらわせる数を求められた(数は大きさの順に並べ替えたので、有理点の順序とは無関係である)。
この方法の欠点は、楕円曲線の有理点を求めることに帰着させてしまったので、出発点となる二つの立方数の和を3とおりに表す数によっては、有理点が求まらないことである(CoCalcでの経験しかないのでよくわからない)。この例では、たまたま位数無限大の有理点が見つかったので、いくつも二つの立方数の和を3とおりに表す数が得られた。
「b. たまたま見つかったパラメータ解」については その3 に書きたい。