ES 地面の目印

以前の数学メモは、地面の目印 -エスワン- にあります。

メモ16 2つの立方数の和を3とおりに表すパラメータ解を求めて(その2)

メモ15の続きである。

 

3.x_1^3+y_1^3=x_2^3+y_2^3=x_3^3+y_3^3 のパラメータ表示

➀  T^3=E_2 となる行列の活用 (失敗)

 au^2+buv+cv^2=(u,v)\begin{pmatrix} a  \quad b/2 \\ b/2  \quad c\end{pmatrix}\begin{pmatrix} u \\ v\end{pmatrix}

なので、\boldsymbol{ u } =\begin{pmatrix} u \\ v\end{pmatrix} , \boldsymbol{A}=\begin{pmatrix} a  \quad b/2 \\ b/2  \quad c\end{pmatrix} として、T^3=E_2 となる2行2列の行列に対し、

p={}^{t}\boldsymbol{u}\boldsymbol{A}\boldsymbol{u}, q={}^{t}\boldsymbol{u}\ {}^{t}T\boldsymbol{A}T\boldsymbol{u}, r={}^{t}\boldsymbol{u}\ {}^{t}T^2\boldsymbol{A}T^2\boldsymbol{u} とおくとき、

4pqr=p^3+3pt^2 となるpを見つかれば、左辺がu,vT,T^2で変換したときに不変であり、 p は それぞれ q,r になることに注意すれば、メモ15の命題1より、

(\frac{p+t}{2})^3+(\frac{p-t}{2})^3=(\frac{q+t_2}{2})^3+(\frac{q-t_2}{2})^3=(\frac{r+t_3}{2})^3+(\frac{r-t_3}{2})^3=pqr

となる。ここで、t_2, t_3 は u, v の2次形式 t をそれぞれ T,T^2 で変換した2次形式である。

T として  \begin{pmatrix} 0  \quad 1 \\ -1  \quad -1\end{pmatrix} で試してみたが、複雑になりうまくいかなかった。

 

 p, q, r の係数を巡回的にする (失敗)

立方数の和を2とおりであらわすケースは、u,v多項式の対称性を利用して、パラメータ解を求めた(メモ15)。これを参考に、u,v の同次2次式である p,q,r の係数を巡回的にした解がないか試みた。すなわち、 

\begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l}p=ax^2+buv+cv^2\\q=cu^2+duv+ev^2 \\ r=eu^2+fuv+av^2 \\t=Au^2+Buv+Cv^2\end{array} \right.\end{eqnarray}

で、 a, b, c, d, e,f, A, B,Cを求めようというものである。 

例えば、p=3(201u^2+64uv+223v^2)\\m=9(201u^2+64uv+223v^2)(223u^2+4uv+217v^2)((217v^2+114uv+201v^2) とするとき、

4m/p-p^2=3(269u^2 + 52uv + 159v^2)^2 は成り立つが、p 以外のm の因子で、この等式はなり立たず断念。

 

③ 立方数を2とおりであらわす特殊な場合として3とおりを考える (ぼちぼち)

立方数を2通りに表すパラメータ解についてはメモ15に書いたやり方で求められる。再掲すると、

 

\begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l}p=au^2+buv+cv^2\\q=du^2+euv+dv^2 \\ r=cu^2+buv+av^2 \\t=Au^2+Buv+Cv^2\end{array} \right.\end{eqnarray}

 

とおき、m を割り切る p に対し  4m/p-p^2=3t^2 となるよう a, b, c, d, e, A, B, C を求めればよい。そうすると、

 

(\frac{p+t}{2})^3+(\frac{p-t}{2})^3=m

 

となる。mu,v の対称式とすれば rm を割り切るので

t_2=Cu^2+Buv+Av^2 とおくと、 4m/r-r^2=3t_2^2 であり、

 

(\frac{p+t}{2})^3+(\frac{p-t}{2})^3=(\frac{r+t_2}{2})^3+(\frac{r-t_2}{2})^3=m

 

となる。これまで m=pqr としてきたが、k有理数として m=kpqr とするとき、  4m/p-p^2=3t^2 が成り立つためには、

 

\begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l}4kdc-a^2=3A^2\hspace{143pt}(1)\\4kdb+4kec-2ab=3\cdot2AB\hspace{92pt}(2) \\ 4kda+4kdc+4keb-2ac-b^2=3\{2AC+B^2\} \hspace{10pt}(3)\\4kea+4kdb-2bc=3\cdot2BC\hspace{92pt}(4)\\4kda-c^2=3C^2\hspace{143pt}(5)\end{array} \right.\end{eqnarray}

 

を解けばよい。(1), (5) の解 a, c, dk, A, C は、立方数を2とおりに表す例から求める。次に(2), (4) を ke,Bの連立一次方程式とみて解く。そうすると、ke,Bb有理数倍として表わされる。次に、これらの値を(3)に代入すると b^2=有理数 という式が得られる。bが有理数として求まれば、そのまま, p,kq,r を用いてパラメータ解が得られる。bb'\sqrt{l} の場合は、v  \sqrt{l}\cdot v で置き換えれば ,p,kq,r有理数係数のu, v の同次二次式となる。

 

このような準備をしたうえで、  4m/q-q^2=3t_3^2 となるケースを求める。そうすると、楕円曲線の有理点の問題に帰着する場合(a.)となぜかu, v有理数係数同次二次式となる場合(b.)が出てきた。以下、その説明をする。

 

a. パラメータ解ではないが、楕円曲線の有理点から自然数での3とおりの立方数の和を幾つもみつける

 上の説明で b有理数でない場合も考慮し、

 

\begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l}p=au^2+bluv+clv^2\\q=du^2+eluv+dlv^2 \\ r=cu^2+bluv+alv^2 \\t=Au^2+Bluv+Clv^2\\t_2=Cu^2+Bluv+Alv^2\\t_3=Du^2+Eluv+Flv^2\end{array} \right.\end{eqnarray}

 

 とおく、このとき、  4m/q-q^2=3t_3^2 が成り立つためには、

 

4m/q=4kpr=4k(au^2+bluv+clv^2)(cu^2+bluv+alv^2)\\=4k\{acu^4+b(a+c)lu^3v+(a^2+b^2l+c^2)lu^2v^2+b(a+c)l^2uv^3+acl^2v^4\}

q^2=d^2+2edlu^3v+(2d^2+e^2l)lu^2v^2+2edl^2uv^3+d^2l^2v^4

t_3^3=D^2+2EDlu^3v+(2DF+E^2l)lu^2v^2+2EFluv^3+F^2l^2v^4

 

より

 

\begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l}4kac-d^2=3D^2\hspace{150pt}(6)\\4kb(a+c)-2ed=6DE\hspace{117pt}(7) \\ 4k(a^2+b^2l+c^2)l-(2d^2+e^2l)l=3(2DF+E^2)l \hspace{10pt}(8)\\4kb(a+c)-2ed=6EF\hspace{118pt}(9)\\4kac-d^2=3F^2\hspace{147pt}(10)\end{array} \right.\end{eqnarray}

 

 でなければならない。

(7)と(9)よりD=F である。(6)、(10)より (\frac{d+D}{2})^3+(\frac{d-D}{2})^3=m である。また、もともと (\frac{a+A}{2})^3+(\frac{a-A}{2})^3=(\frac{c+C}{2})^3+(\frac{c-C}{2})^3=m であることに注意しておく。

 

以上より、3とおりに立方数の和で表される自然数 m を持ってくれば、a, b, c, d, e, A, B, C, D がさだまるので、(7)、(8) より矛盾なく E が定まれば、立方数を3とおりに表すパラメータ解が見つかることになる。

 

(7) ,(8)を両方満たす解は見つかりそうもないと思ったので、  4m/q-q^2=3t_3^2 の右辺をu,v の式とし、この式を満たす 有理数 t_3 を求めれば、それに対応して立方数の和を3とおりに表せる組が見つかることに注意し、その方向を試みた。

この式は、

 

3t_3^2=(4kac-d^2)u^4+\{4kb(a+c)l-2edl\}u^3v+\{4k(a^2+b^2l+c^2)l\\-(2d^2+e^2l)l\}u^2v^2+\{4kb(a+c)l^2-2edl^2\}uv^3+(4kac-d^2)l^2v^4\hspace{10pt}(11)

 

となる。この両辺をv^4で割り、x=u/v, y=t_3/v^2 とおけば、y^2x の4次式となる。ここで、3とおりに立方数の和で表せる組を持ってくれば、4次式の定数項と4次の項が平方になるので、この x,y有理数体上の楕円曲線となり、Weierstrass標準形に変換し、さまざまなツールを用いて有理点を求めることができる。以下に例をあげる

 

例:

2つの立方数の和を自然数で3とおりに表せる最小の数である 87,539,319 を取り上げる。

 436^3+167^3=423^3+228^3=414^3+255^3=87539319 であり、それぞれ立方数もととなるの自然数の和が a,d,c に等しいことから、a=603,d=651,c=669 とする。このとき、

 

1/3\cdot 603\cdot 651\cdot 669=87538319

 

であるので、k=1/3 である。また、

 

4\cdot 1/3\cdot 651\cdot 669 - 603^2=3\cdot 269^2

4\cdot 1/3\cdot 651\cdot 603 - 669^2=3\cdot 159^2

4\cdot 1/3\cdot 603\cdot 669 - 651^2=3\cdot 195^2

 

に注意すると、 A=269, C=159, D=195 である。

(2)、(4)より

 

4\cdot 1/3\cdot 651b+4\cdot 1/3\cdot 669e-2\cdot 603b=3\cdot 2\cdot 269B\\4\cdot 1/3\cdot 603e+4\cdot 1/3\cdot 651b-2\cdot 669b=3\cdot 2 \cdot 159B\

 

より

 

e=\frac{7\cdot 59}{3^2\cdot 47}b, B=\frac{419}{3^3\cdot 47}b

 

 これらを(3)に代入し、

 

 4\cdot 1/3\cdot 651\cdot 603+4\cdot 1/3\cdot 651\cdot 669+4\cdot 1/3\cdot \frac{7\cdot 59}{3^2\cdot 47}b^2\\-2\cdot 603\cdot 669 b^2=3(2\cdot 269\cdot 159+\frac{419}{3^3\cdot 47}b^2)

 

より b=\pm 3^3\cdot 47  

ここで b=3^3\cdot 47=1269 とすれば、e=3\cdot 7\cdot 59=1239, B=419

得る。以上より、(11)は b有理数なので、l=1であることに注意すれば、

 

 t_3^2=38025u^4+179682u^3v+281995u^2v^2+179682uv^3+38025v^4

 

を得る。両辺を v^4 で割り、\mu=u/v, \nu =t_3/v^2 とおけば

 

\nu^2=38025\mu^4+179682\mu^3+281995\mu^2+179682\mu+195^2

 

となる。これを 

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の方法でWeierstrass標準形に直し、CoCalcにより生成元を求めると

楕円曲線

 

 y^2 + 59894/65xy + 70075980y \\= x^3 + 294606066/4225x^2 - 5783602500x - 403286243747400

 

生成元

 

P=(-74598,36456816/65), Q=(-64434, -57173952/65)

 

が得られた。これらをもとの \mu,\nu に関する式に戻し、u, v, t_3 を求めると

 

 P \rightarrow u=-42501, v=12554, t_3=-130420491663

Q \rightarrow u=-54,v=23,t_3=-12705

 

が得られた。これより、それぞれ以下の2つの立方数の和の3とおりの表現が得られた。なお、公約数により除して、 立方数の元となる数の公約数は1となるようにした。

 

\hspace{10pt}475191372 ^3+ 135873351 ^3\\= 432367162 ^3+ 307170191 ^3\\=441479496 ^3+ 287500167 ^3\\= 109809897160193048290173399

 

\hspace{10pt}522 ^3+ 111 ^3\\= 460 ^3+ 359 ^3\\=423 ^3+ 408 ^3\\= 143604279

 

また、以下の24の有理点について同様のことを行い、16の2つの正の立方数の和で3とおりにあらわせる数を求められた(数は大きさの順に並べ替えたので、有理点の順序とは無関係である)。

 

 \pm P,\pm Q, \pm P\pm Q,\pm2P \pm Q, \pm P\pm 2Q, \pm 2P, \pm 2Q, \pm 3P, \pm3Q

 

 143604279\\ 627556093310601\\ 2510212376197701\\ 860166924608927511\\ 3095093374214754537261 \\109809897160193048290173399\\686481971147869015109613159\\37485520821790681880644511506119\\371431619744813421546289856794839\\43627662797647983293122991687941338159 \\6161536920488166281715895339861910441974059523959 \\17563408512773388252369798214088162533612602222587856981 \\23942408821559557912897026578399477382597477196386933879 \\206714361999225177119245255919306025192939969010716867081 \\392650724888733214405336016241665878644243725338425719750002812300446199 \\259347445694806563185691638228206345296770398947044806793002094624274827569193245708158777860962311
 

  この方法の欠点は、楕円曲線の有理点を求めることに帰着させてしまったので、出発点となる二つの立方数の和を3とおりに表す数によっては、有理点が求まらないことである(CoCalcでの経験しかないのでよくわからない)。この例では、たまたま位数無限大の有理点が見つかったので、いくつも二つの立方数の和を3とおりに表す数が得られた。

 

「b. たまたま見つかったパラメータ解」については その3 に書きたい。