ES 地面の目印

以前の数学メモは、地面の目印 -エスワン- にあります。

メモ13 3とおりに表せる2つの立方数の和

3とおりで2つの自然数の立方和で表せる自然数の小さいものから4つは以下のとおりである。(http://oeis.org/wiki/Hardy–Ramanujan_numbers を参照)

 

 167^3+436^3=228^3+423^3=255^3+414^3\\ \hspace{3cm} =87,539,319=3^3・7・31・67・223\\492^3+90^3=428^3+346^3=493^3+11^3\\ \hspace{3cm} =119,824,488=2^3・3^3・7・19・43・97\\423^3+408^3=522^3+111^3=460^3+359^3\\\hspace{3cm}=143,604,279=3^3・7・13・211・277\\ 198^3+552^3=525^3+315^3=560^3+70^3\\\hspace{3cm}=175,959,000=2^3・3^3・5^3・7^3・19

 

また、1番目の式については 606^3-513^3=87,539,319 でもある。

2番目の式については 648^3-534^3=119,824,488

3番目の式については 3996^3-3993^3=143,604,279

4番目の式については 630^3-420^3=175,959,000 でもある。

 

2とおりの立方和で表せる自然数については、ラマヌジャンの見つけたというパラメータ解

(6a^2-4ab+4b^2)^3+(-5a^2+5ab+3b^2)^3\\\hspace{3cm}=(4a^2-4ab+6b^2)^3+(3a^2+5ab-5b^2)^3

 

がある。3とおりの場合にもそのようなパラメータ解がないか考えているところである。以下、ここでは便宜上、3とおりで2つの自然数の立方和で表せる自然数を「タクシー3」と呼ぶことにする。

 先ず、以下に注意する。

(命題)自然数 m と整数 x, y (x\gt y) について x^3+y^3=m と表わせることと x+y=p とするとき m=p\cdot{q}\cdot{r} (p,q,r自然数) かつ 3x^2-3px+p^2-qr=0 は同値である。 このとき、 4qr-p^2=3t^2 (t :自然数) x=(p+t)/2, y=(p-t)/2 である。

(説明)

⇒ mは自然数なので x \gt 0 かつ x+y\gt 0 である。m=(x+y)(x^2-xy+y^2) なので x+y=p とおくと m=p{x^2-x(p-x)+(p-x)^2}=p(3x^2-2px+p^2) したがって、3x^2-2px+p^2=qr とおけば、 3x^2-3px+p^2-qr=0

⇐ 2次方程式 3z^2-3pz+p^2-qr=0 は整数 x を解にもつので判別式は平方数である。すなわち、  (3p)^2-12(p^2-qr)=9t^2 (t :自然数) である。 x+y=pなのでこの方程式の他方の解は y であり x\gt y に注意すれば、 x=(p+t)/2, y=(p-t)/2 である。

(説明終)

 

タクシー3 x_1^3+y_1^3=x_2^3+y_2^3=x_3^3+y_3^3 =mについて上の命題を適用すると

m=p_{1}q_{1}r_{1}=p_{2}q_{2}r_{2}=p_{3}q_{3}r_{3}

4q_1r_1 - p_1^2=3t_1^2

4q_2r_2 - p_2^2=3t_2^2

4q_3r_3 - p_3^2=3t_3^2

である。p_i,q_iがばらばらであると複雑すぎて手の付けようがないので、p,q,rが巡回的であると考えてみる。

 つまり

m=pqr

4qr - p^2=3t_1^2

4rp - q^2=3t_2^2

4pq - r^2=3t_3^2

が成り立てば、  

(p+t_1)^3+(p-t_1)^3=(q+t_2)^3+(q-t_2)^3\\\hspace{5cm}=(r+t_3)^3+(r-t_3)^3

となり、非常に美しい。

そこで、最初の2つのタクシー3について状況を調べてみる。

① タクシー3: 87,539,319 の場合

 167^3+436^3=228^3+423^3=255^3+414^3=87,539,319=3^3\cdot7\cdot31\cdot67\cdot223
であるので、
m=87539319=3\cdot201\cdot217\cdot223に注意すると
x_1+y_1=167+436=603=3\cdot201\hspace{1cm} 4\cdot3\cdot217\cdot223 - (3\cdot201)^2=3\cdot269^2
x_2+y_2=228+423=651=3\cdot217\hspace{1cm} 4\cdot3\cdot223\cdot201 - (3\cdot217)^2=3\cdot195^2
x_3+y_3=255+414=669=3\cdot223\hspace{1cm} 4\cdot3\cdot201\cdot217 - (3\cdot223)^2=3\cdot159^2
が成り立つ。

② タクシー3: 119,824,488 の場合

492^3+90^3=428^3+346^3=493^3+11^3=119,824,488=2^3\cdot3^3\cdot7\cdot19\cdot43\cdot97
であり、 m=11982488=19\cdot6\cdot84\cdot97\cdot129 に注意すると
x_1+y_1=492+90=582=6\cdot97\hspace{1cm} 4\cdot19\cdot129\cdot84 - (6\cdot97)^2=3\cdot402^2
x_2+y_2=428+346=774=6\cdot129\hspace{1cm} 4\cdot19\cdot84\cdot97 - (6\cdot129)^2=3\cdot82^2
x_3+y_3=493+11=504=6\cdot84\hspace{1cm} 4\cdot19\cdot97\cdot129 - (6\cdot84)^2=3\cdot482^2
である。

これより、m=k_1\cdot{k_2}\cdot{p}\cdot{q}\cdot{r} のとき

4k_{1}qr - (k_{2}p)^2=3t_1^2
4k_{1}rp - (k_{2}q)^2=3t_2^2      (A)
4k_{1}pq - (k_{2}r)^2=3t_3^2

となる自然数解、p,q,r,k_1,k_2,t_1,t_2,t_3が存在し、その時

(k_2\cdot{p}+t_1)^3+(k_2\cdot{p}-t_1)^3=(k_2\cdot{q}+t_2)^3+(k_2\cdot{q}-t_2)^3\\ \hspace{7cm}=(k_2\cdot{r}+t_3)^3+(k_2\cdot{r}-t_3)^3

となることを意味する。
 タクシー3: 87539319の場合は、k_1=k_2=3
       119824488の場合は、k_1=19、k_2=6である。
このようにk_1,k_2が定まることは、3番目と4番目のタクシー3についても同様である。

 逆に、不定方程式(A)の自然数解を見つければ、タクシー3が得られることになる。願わくばパラメータ解が得られれば、うれしいことこの上ない。

 不定方程式らしくp,q,rx,y,zで置き換えて不定方程式、(A)を次の形のx,y,z,k_1,k_2,t_1,t_2,t_3不定方程式と考える。

4k_{1}yz - (k_{2}x)^2=3t_1^2
4k_{1}zx - (k_{2}y)^2=3t_2^2       (A)
4k_{2}xy - (k_{2}z)^2=3t_3^2

k_1を消去すると

k_2^2\cdot{x}^3+3x\cdot{t}_1^2=k_2^2\cdot{y}^3+3y\cdot{t}_2^2=k_2^2\cdot{z}^3+3z\cdot{t}_3^2   (B)

さらに、k_2を消去すると

 (-3x\cdot{t}_1^2+3y\cdot{t}_2^2)/(x^3-y^3)=(-3x\cdot{t}_1^2+3z\cdot{t}_3^2)/(x^3-z^3)           (C)

となり、これらを満たす自然数x,y,z,t_1,t_2,t_3を求める。(C)式は、k_2^2となるので、これらの解のうちk_2自然数となる解を求める。さらに、k_1は(A) より求める。但し、整数にはならないかもしれない。それでもタクシー3が得られるので良いとする。

 あるかどうかわからないパラメータ解をいきなり探すのも大変なので、(C)式を用いてタクシー3を幾つも探し出す方法はないか考えてみた。

 ①、②の例でも分かるように、x,y,z,t_1,t_2,t_3は多くの場合3桁以上の数になることが想定されるので、しらみつぶしに探すのは効率的でない。そこで

x+y+z=Kとおき、Kを動かして解を探すこととして、

x=u+v+K/3, y=-u+v+K/3, z=-2v+K/3

とおくこととした。逆変換は、

u=(x-y)/2, v=(x+y)/2-K/3

である。ここで、2u及び6vは整数であることに注意する。

(C)を変形して

(-3x\cdot{t}_1^2+3y\cdot{t}_2^2)(x^3-z^3)=(-3x\cdot{t}_1^2+3z\cdot{t}_3^2)(x^3-y^3)
y(x^3-z^3)t_2^2=x(y^3-z^3)t_1^2+z(x^3-y^3)t_3^2

さらにu,v,Kを用いて書き直すと

 At_1^2=Bt_2^2+Ct_3^2    (D)

ここで、
A=(u+3v)(K^2/3+K(u-v)+u^2+3v^2)(-u+v+K/3)
B=(-u+3v)(K^2/3+K(-u-v)+u^2+3v^2)(u+v+K/3)
C=2u(K^2/3+2Kv+u^2+3v^2)(K/3-2v)

これから、Ku,vを与えて (D)式より t_1,t_2,t_3を求めることを考えた。しかし、t_1が3桁以上の数になることが多く、計算に時間を要して思うような結果が出なかった。
  ①や②の結果からk_2,u,vはあまり大きな数にならないことが期待されたことと

  3u^2+9v^2=3(x-y)^2/4+9/4(x+y)^2-3(x+y)K+K^2
  =3(x^2+y^2+xy)-3(x+y)(x+y+z)+K^2
  =-3(xy+yz+zx)+K^2

が整数になることから、u,vを与えた上で(B)式のうち、k_2, Kを与えて

k_2^2\cdot{x}^3+3x\cdot{t}_1^2=k_2^2\cdot{y}^3+3y\cdot{t}_2^2

を満たす解t_1,t_2を求め、

   k_2^2\cdot{y}^3+3y\cdot{t}_2^2=k_2^2\cdot{z}^3+3z\cdot{t}_3^2  

より、自然数t_3を求めることとした。

 CoCalcで簡単なコードを書き、|u|+3|v|が30以下、かつ、K,t_2が1000以下で求めたタクシー3は以下のとおりである。なお、同一のタクシー3が複数回出てくる場合は|u|+3|v|が最も小さな場合のみ掲載している。また、プリミティブなタクシー3、つまり6つの立方数の最大公約数が1であるもののみについて表示している。

|u|+3|v|=4 のとき

  u=-1/2, v=-7/6, t_1=370, t_2=322, t_3=70, k_1=22197/109, k_2=30

          670 ^3 + 300 ^3 = 661 ^3 + 339 ^3 = 580 ^3 + 510 ^3 = 327763000

 

         u=-3, v=-/3, t_1=915,t_2=625,t_3=729, k_1=8703, k_2=45

          930 ^3 + 15 ^3 = 920 ^3 + 295 ^3 = 927 ^3 + 198 ^3 = 804360375

 

|u|+3|v|=7 のとき

          u=-2, v=-5/3, t_1=490, t_2=354, t_3=210, k_1=399, k_2=30

          560 ^3 + 70 ^3 = 552 ^3 + 198 ^3 = 525 ^3 + 315 ^3 = 175959000

 

|u|+3|v|=16 のとき

          u=-11, v=-5/3, t_1=269, t_2=159, t_3=195, k_1=3, k_2=3
          436 ^3 + 167 ^3 = 414 ^3 + 255 ^3 = 423 ^3 + 228 ^3 = 87539319

 

|u|+3|v|=17 のとき

          u=-12, v=-5/3, t_1=3351, t_2=609, t_3=1855, k_1=7203/4, k_2=69
          7974^3 + 1272 ^3 = 6888 ^3 + 5670 ^3 = 7651^3 + 3941^3= 509082282072

 

|u|+3|v|=22 のとき

          u=-13, v=-3, t_1=5675, t_2=925, t_3=2377, k_1=556491/49, k_2=75
          9825^3 + 4150^3 = 8425^3 + 7500^3 = 9001^3 + 6624^3 = 1019886765625

 

|u|+3|v|=29のとき

   u=-15/2, v=-43/6, t_1=1374, t_2=984, t_3=424, k_1=273, k_2=24

   1455 ^3 + 81 ^3 = 1440 ^3 + 456 ^3 = 1328 ^3 + 904 ^3 = 3080802816

 

 WEB (http://oeis.org/wiki/Hardy–Ramanujan_numbers)によると、小さいほうから14番目までのプリミティブなタクシー3は、以下のとおりである。上の計算で求められたものを太字とした。ここであげた計算法では、|u|+3|v|を大きくしないと、求められないタクシー3も多いようである。ちなみに、|u|+3|v|=30 までで求められなかったタクシー3について、必要な |u|+3|v| の値を 該当するタクシー3の右に記す。 

 

87539319,
119824488,    |u|+3|v|=45
143604279,            |u|+3|v|=66
175959000,
327763000,
804360375,
1840667192,          |u|+3|v|=64
1915865217,          |u|+3|v|=50
3080802816,
3499524728,          |u|+3|v|=129
3623721192,          |u|+3|v|=90
5544709352,          |u|+3|v|=121
10458523413,        |u|+3|v|=76
10499580728         |u|+3|v|=175