1.はじめに
2つの自然数の3乗の和として2通りに表せる自然数をタクシー2と呼ぶことにする。そうすると最小のタクシー2がいわゆるラマヌジャンのタクシー数
である。
タクシー2を求めるには、次に不定方程式を解けばよい。
この不定方程式の有理数解は以下で与えられる(出典:ウィキペディア)。
これらの立方和を求めると
である。
2.タクシー2を与えるa,b,t
(命題1)タクシー2 について
とするとき
である。このとき t,bはともに 0 ではない。
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(説明)
より
これを用いて上の2番目と4番目の式を書き直すと
これを、t,aの連立方程式とみて解けばよい。
なお、 とすると、 となり 矛盾。 よって
また、b=0 とすると
よって
よって
よって、これらの3乗和は0となり、タクシー2の定義に矛盾
(説明終)
ちなみに
にこの命題を適用すると、 が得られる。
今、広義のタクシー数を 有理数の3乗の和で2通りに表わされる0でない有理数とすると、(2)はその一般解を与える。
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(系1)広義のタクシー2について、命題1が成り立つ
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(説明)命題1の説明と同様 (説明終)
mを広義のタクシー2とすると、有理数 が存在して
であり、命題1より、 を与える有理数 が求められる。
と の交換や と と の同時交換でも同じmを与えるので、mから定まる は8組存在する。
を と表現すると、これらの8組を与える は次のように表現される。
①:
②:
③:
④:
⑤:
⑥:
⑦:
⑧:
から を定める写像を とする。つまり、
① である。
このとき、
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(命題2)① とし、 とおくとき
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
また、 とすると、8組の(a,b)について が成り立つ。
つまり、有理数の乗法群Q*において、同値関係k⇔k’を で定めた時、8組の(a,b)についてk(a,b)は同じ同値類を定める。
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(説明)
とする。
とおくとき、
である。
を の関数とみると、
であるので であり、②がいえた。
③~⑧については、付記1を参照のこと。 (説明終)
タクシー2の集合、広義タクシー2の集合 は、以下のように表わされる。
である。
命題2により、3通り以上では表わせないタクシー2の集合 (広義タクシー2の集合 )から有理数の乗法群 の同値関係 k⇔k’ を で定義する場合の商集合への写像 が定義されることとなる。この商集合を と表わすこととする。
実は、この写像は3通り以上で表わせるタクシー2(広義タクシー2)についても定義されることを次節以降見ていくこととする。
3.タクシー2を定めるa,b,tとタクシー3の関係
タクシー2の場合と同様に、タクシー3を2つの自然数の和として3通りに表せる自然数、広義のタクシー3を有理数の3乗の和で3通りに表わされる有理数≠0とする。同様にnを自然数としたとき、タクシーnや広義タクシーnが定義できる。タクシーn(広義タクシーn)の集合 は
と表わされ、定義より
である。
今mをタクシー3(広義タクシー3)とすると 自然数(有理数)の異なる組 が存在して
となる。
このうちの2つの組だけに注目すると、
と3つのタクシー2(広義タクシー2)が得られる。これらについて、 の同値類が対応するが、次の命題3に示すとおり、これらの3つのタクシー2は、すべて同じ同値類となる。結果として はタクシー2全体の集合 からの写像となり、それをタクシー3(タクシーnでもよい)に制限した際にもwell defined である。
また、 について、 を で定めると、これは同値関係であり、mとm'は同じ同値類を定めることは容易にわかるので、 から への写像 が定まり、下の図式は可換である。
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(命題3)
タクシー2 に対し、mの異なる表現 がある場合、タクシー2の組 は で同じ同値類を定める。
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(説明)付記2を参照のこと。 (説明終)
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命題4
タクシー3(広義タクシー3) において、
とするとき 、①~③が成り立つ
①
② ①においてa、bを定数とみたa',b'に関する平面3次曲線とa'、b'を定数とみたa,bに関する平面三次曲線は同じ曲線である。その方程式は、
ここで、
③
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(説明) 付記3を参照のこと。 (説明終)
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命題4とは逆に(4)が成り立てば、タクシ―3(広義タクシー3)が得られるであろうか。
(命題5)
有理数a,b(b≠0)について、平面3次曲線
の有理点( a',b')≠(a,b) について、
でない有理数
とするとき、3通りの相異なる2つの有理数の3乗の和
となる。つまり、(5)の平面3次曲線の有理点は の同値類を定める。
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(説明)付記4を参照のこと (説明終)
4. 広義タクシー2 と広義タクシーn は同じもの
次に、広義タクシーn(n=2,3・・・・)の集合 はすべて等しいことを示す。
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(命題6)
広義タクシー2 の集合 は 広義タクシーn(n=2,3・・・)の集合 に等しい。
よって、広義タクシー2 の集合 の ~ による同値類は 広義タクシーn(n=2,3・・・)により代表される。
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(説明)
をいえばよい。
とすると、相違なる
である。また、有理数 があって、
となる。
このとき、命題1の系1のより である。
命題4,5により、平面3次曲線
ここで、
の有理点 が存在すれば とは異なる が存在して、
となる。つまり、 よって
(6)の平面3次曲線は非特異である。なぜなら、
とすると
を満たす解はないことから分かる。
したがって、この平面3次曲線は楕円曲線となる。これを とする。
(6)の曲線の有理点(1,0)で接線を引くことにより、有理点
を得る。
とする。
メモ20,21より、この平面3次曲線には(1,0)を原点とする加法が導入される。この加法について は位数∞であることをいえば、異なる有理点が無数に存在することとなり、 がいえる。
今、 から接線を引くと、 と交わるもう一つの点がある。この点から原点 を結ぶ直線が と交わる点を とすれば、その求め方から である。から同じ操作で を作成する。同様にを作成する。そうすると である。 の位数が有限とすると、自然数 i>j が存在して、 となる。このような の組で最も小さな をとり、 をその について、 となる最も小さな とする。
したがって、
2倍して0となる点は、 からE上の点に接線を引いた場合、その接点となる点である。 の作成のしかたから原点はそのような点であり、そのような点は1点に限るので、 よって
これは の選び方に矛盾。よって の位数は無限大である。
(説明終)
実は、広義ではないタクシーnについて、命題6の後半が成り立つと考えている。
つまり3乗の違いを除けば、タクシー2は、2つの自然数の3乗和としてn通りに書けることになる。例えば、有名なタクシー数 は、
などとなる。
これについては、予想に誤りがなければ、次回以降のメモに記したい。
付記
付記1
(命題2:再掲)① とし、 とおくとき
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
また、 とすると、8組の(a,b)について が成り立つ。
つまり、有理数の乗法群Q*において、同値関係k⇔k’を で定めた時、8組の(a,b)についてk(a,b)は同じ同値類を定める。
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(説明)
②については、本文中に記した。
③:
とおくと
に注意すれば
これで③が言えた。
次に④を示す。
とすると ①②より
よって③より④が言えた。
⑤を示す。
⑥を示す。
⑤より であるので
①②より
⑦を示す。
を とおく。
である。
①③より
⑧ は⑦ に①と②の関係を適用すればよい。
次に命題のまた以下を示す。
②について k(a,-b)=-k(a,b) より命題は成り立つ。
③から⑧までについて Fの像を ここで とすると
であり、上に示した通り、 よって、
よって③について命題は成り立つ
より④についてもOK
よって
よって⑤についてもOK
より ⑥についてもOK
(③についてと同様の議論による)
これより⑦もOK
これより⑧についてもOK (説明終)
付記2
(命題3:再掲)
タクシー2 に対し、mの異なる表現 がある場合、タクシー2の組 は で同じ同値類を定める。
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(説明)
タクシー2の組 について とすると
とするとき
また、タクシー2の組 について とすると
とするとき
よって、
及び より
かつ
よって、
命題2の④より
ただし、
とするとき
上と同様の議論で、
より と は同値である。
よって、 と は同値である。 (説明終)
付記3
(命題4:再掲)
タクシー3(広義タクシー3) において、
とするとき 、①~③が成り立つ
①
② ①においてa、bを定数とみたa',b'に関する平面3次曲線とa'、b'を定数とみたa,bに関する平面三次曲線は同じ曲線である。その方程式は、
ここで、
③
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(説明)
命題3の説明にあるように
について である。
を変形して、
よって、
これで①が言えた。
② a,bを定数とみた場合の方程式は、a',b'をそれぞれX,Yと置き換えると
両辺を で割ると
a’,b’を定数とみた場合、a,bをX,Yとおけば、同じ方程式が得られる。
③ k=1とすると よって、
そうすると となり矛盾。よって 同様に
k=0とすると よって から
これは という平面3次曲線に有理数解があることになる。
この曲線は、
という変換で という楕円曲線の変換される。逆変換は
である。この楕円曲線の有理点をsageで求めると (12,0) のみであり、平面3次曲線に戻すと(1,1)となる。したがって、[tex:x_{1}=x_{2}=y_{2}=1 となり mがタクシー3(広義タクシー3)であることに矛盾する。 (説明終)
付記4
(命題5:再掲)
有理数a,b(b≠0)について、平面3次曲線
の有理点( a',b')≠(a,b) について、
でない有理数
とするとき、3通りの相異なる2つの有理数の3乗の和
となる。つまり、(5)の平面3次曲線の有理点は の同値類を定める。
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(解説)
(5)式を a,b,a’,b’ で書き直すと
両辺に をかけて
これを とおくと
に注意すれば
である。
は広義タクシー2であり、命題1によりこれらは3つのパラメーターにより一意的に定まる。 がこれらを定めるが、
が に等しいとすると、 となり、 であることに矛盾。 (説明終)