本メモ21は、メモ20の続きであるので、メモ20からご覧いただけば幸いです。
4.非特異平面3次曲線とそのWeierstrass標準形の間の双有理変換が準同型であることの確認
ここでは、メモ19,20で記した双有理変換 φ が準同型であることを2つの例でみてみる。
対象とする3次曲線とWeiestrass標準形は、以下の2つの曲線 E と W であった。
(k:有理数≠0,±1) (1)
ここで、
(x,y)=(1,0) は明らかにEの有理点である。
メモ20より、Wの単位元(0:1:0)は、双有理変換 φ により(1,0)に写されるので、(1,0)をEの単位元 とする。 ここでc, d, d', f を以下のとおり定める。
c=(c1,c2) : で接線を引いて交わるもう一つのEの点
d=(d1,d2) :cで接線を引いて交わるもう一つのEの点
d'=(d1’,d2’): d、、と一直線になるEの点
f=(f1,f2) : d で接線を引いて交わるもう一つのEの点
これらの点の具体的な座標は、本ブログ下部にある付記1を参照。
メモ20の「2. 特異点のない平面3次曲線の加法について」によると、
c: Figure 1.8 のSに相当する。
d: Figure 1.6 より c*c に相当する
d’:Figure 1.6 より 2c に相当する。
f: d*d に相当する
である。また、以下のことがわかる。
① d=-c
cとdを直線がcで接することから c*d=c であり、c と oを結ぶ直線は oで接することから d=-c である。
② f=d’+c
f=d*d であるので fとoを結ぶ直線がEと交わるもう一つの点f'は2d=-2c である。
d’*c とo を結ぶ点がEと交わるもう一つの点はc+d'=3cである。一方で、cとd'を結ぶ直線がd'*cで交わるので、d’*c=-d’=-2cである。したがって、f’に等しい。よってf=d’+cである。
③ d’*c=-d’ c*(-d’)=d’
c がFigure 1.8 の S に相当することと * の定義よりわかる。
φ、したがってφ-1が準同型(実際は同型)となっていることを、以下の2つのケースについてW上の点で見てみよう。計算にはsagemathを用いる。
③ φ-1(d')=2φ-1(c)
④ φ-1(c+d')=φ-1(c)+φ-1(d')
付記2により、
である。
φ-1(c)で接線を引くと、もう一つのWとの交点 (s0,t0) をsagemathにより求めると、
さらに、s=s0 と Wとの(s0,t0)以外の交点(s0,t1)を同じくsagemathで求めると
であり、(s0,t1) はその求め方より2φ-1(c)である。この値は、付記2のφ-1(d')に等しい。これで③が言えた。
次に、φ-1(c) と φ-1(d')の和を求める。この2点以外にW と交わる点(s2,t2)をsagemathで求め、さらに、s=s2とWが交わる(s2,t2)以外の点(s2,t3)が求める和である。実際に計算すると、
を得る。(s2,t3)の値は、付記2の φ-1(f) に等しい。②よりc+d'=f であり、④が言えた。
付記1 ある非特異平面3次曲線と直線の交点のうち2点が与えられたとき、もう1つの交点を求める
以下の非特異平面3次曲線を考える。
(k:有理数≠0,±1) (1)
与えられた2つの交点を(x0,y0),(x1,y1) とする。
このとき、
Case1:(x0,y0)≠(x1,y1)
直線の方程式は以下のとおりである。
Case2:(x0,y0)=(x1,y1)
このときの直線は、この点におけるEの接線と考える。
接線の方程式は、
(1)をxで微分すると
よって、
であれば
Eの点(x0,y0)での接線の方程式は
である。
のときは、
であるので、Eが非特異であることから、
となり、接線の方程式は
である。
以下、直線が となる場合を除外して考える。
そのとき、Case1 及び Case2 において、直線の方程式は
となる。mは
case 1のとき (2)
case 2 のとき (3)
これを(1)に代入して
これはxの3次方程式でありその根のうちの2つが x0, x1である(x0=x1の場合は2重根と考える)。x2をもう一つの根とすると、
この方程式の
の係数は →
の係数は →
よって、根と係数の関係より
である。よって、もう一つのEと直線の交点(x2,y2)の座標は、
(4)
である。
具体例:
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例1: o=(1,0)で接線を引いて交わるもう一つのEの点 c=(c1,c2)の座標は
----------------------------------------------
(3)より 接線の傾き
よって、(4)より
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例2: cで接線を引いて交わるもう一つの E の点 d=(d1,d2)の座標は
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接線の傾きは(3)で
を代入して計算すると
よって、(4)より、
である(計算では、kの有理式を多項式の分子と分母にわけsagemathを用いて計算)。
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例3:d及びoと一直線になるEの点d'=(d1’,d2’)の座標は、
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(2)よりd, o, d’を通る直線の傾きを求め、(4)よりd'の座標を求めた。
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例4:d で接点を引いて交わるもう一つのEの点 f=(f1,f2) の座標は、
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例1~3と同様に求める。
付記2 φ-1 による Eの有理点のWでの像
- (1:0) -> (0:1:0) メモ20 付記3命題3による
メモ20 付記3命題3による。
sagemathを用いた計算による。
sagemathを用いた計算による。k=5でsagemathにより点検済み
sagemathを用いた計算による。k=5でsagemathにより点検済み